2023 Fiscal Year Research-status Report
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20K03602
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 亮吉 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80629759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 離散群 / ランダムウォーク |
Outline of Annual Research Achievements |
有限生成群のLiouville性との関連でランダムウォークのノイズ鋭敏性について研究を行った。これは近年当該分野の研究者により提起された新しい問題である。ランダムウォークがノイズ鋭敏的であることはLiouville性を導くこと、またランダムウォークがノイズ鋭敏的であることはランダムウォークに依存した性質(生成系のとり方に依存した性質)であることがわかっている。このため未解決問題であるLiouville性予想との関連でも興味深い。当該年度はほぼ全く未開拓といって良いランダムウォークのノイズ鋭敏性について研究を行い、成果が得られた。特に非初等的な語双曲群上のスタンダードなランダムウォークはノイズ鋭敏的でなく、さらにノイズ鋭敏的であることからほど遠い挙動を示すことがわかった。この結果を得るために用いた手法は語双曲群の積の上のランダムウォークの調和測度を解析するというものである。より具体的には積についての調和測度のハウスドルフ次元公式を確立し、次元のパラメータについての連続性を示す、というものである。この方向はそれ自体新しいものである。現在はこの新しい手法を発展させる研究を行っている。得られた成果は、論文として公開し、雑誌に投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ未開拓な問題の研究に着手し一定の成果を論文としてまとめ出版にこぎつけることができたため、おおむね順調に進展していると言っても良いのではないかと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点までの研究により、新しい手法が得られさらにそれを発展させる見込みが得られている。この方向を発展させるべく研究を続けていく。具体的には、ノイズ鋭敏性の研究では群の積の上のランダムウォークを扱うが、ランダムウォークの積についての振る舞いは、自然な問題であるにも関わらず基本的に手つかずであった。今回の研究により周辺分布がともに与えられたランダムウォークに等しい場合には、調和測度の解析がある程度できることがわかった(語双曲群の積についての調和測度のハウスドルフ次元公式を確立した)。周辺分布が異なるランダムウォークの場合は、決定的な困難があることがわかっている。 今後はこの場合を特に詳しく研究する予定である。
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Causes of Carryover |
パンデミックの余波によりその期間にキャンセルになり未使用のままになっていた旅費がそのまま残っており、それをさらに繰り越すことになった。これは次年度に使用の目途が立っているものである。
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