2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of rigidity of foliations based on global geometry of leaves
Project/Area Number |
20K03620
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野澤 啓 立命館大学, 理工学部, 准教授 (80706557)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 葉層構造 / 群作用 / 剛性 / タイル張り / トポロジー / 微分位相幾何 / グラフ理論 / 力学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
曲面群の円周への群作用から得られる懸垂葉層構造の剛性について,調和測度を用いた研究を足立正訓氏(静岡大学),松田能文氏(青山学院大学)と共同で行った.カスプ付きの曲面の基本群の円周への群作用の懸垂葉層構造を考えたとき,懸垂葉層の平坦接続を調和測度で平均して得られる接続に対してガウス・ボネの公式が成り立つことを示した.応用として,バーガー・イオッチ・ワインハルトらによる円周への極大なオイラー数を持つ群作用がフクス的な作用に半共役になるという定理の別証明を与えた.また,この応用として完備なザイフェルト多様体の極大なオイラー類を持つ横断的葉層の剛性を得た.これらの結果は現在論文にまとめている. ポアンカレ円板上の格子の作用があるとき,ポアンカレ円板の一点,測地線とその管状近傍を選ぶと,切断射影法の一般化により,ある条件下で測地線内のデローネ集合を構成できることを以前へスュス=アルバレス=ロペス氏(サンティアゴ デ コンポステラ大学),ラモン=バラル=リホ氏(立命館大学),ジョン=ハントン氏(ダラム大学),ジョン=パーカー氏(ダラム大学)との共同研究により証明した.このデローネ集合から自然に得られる葉層付き空間である平行移動包について,ラモン=バラル=リホ氏と共同で研究し,エントロピーの計算を行った. リー葉層構造の剛性についてガエル=メニエ氏(マルセイユ大学)と共同研究を行った.以前証明した局所的に対称な葉を持つリー葉層構造が等質的な葉層構造に微分同相になる,という剛性定理の別証明をベッソン・クルトワ・ガロの重心写像を用いて与えた. ラモン=バラル=リホ氏,へスュス=アルバレス=ロペス氏とカルロス=メニーニョ=コトン(ヴィーゴ大学)と共同で,カオス的な葉層構造について研究し,グラフによる例の構成や,与えられたリーマン多様体がカオス的な葉層構造の葉として実現されるための必要条件を求めた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は懸垂葉層の剛性について大きな進展が得られた.特に,オイラー数が極大になるような円周への曲面群の群作用について,その懸垂葉層の調和測度が剛性を持つことを示すことができた.この結果は、足立正訓氏による,ハルナックの不等式と等周不等式を用いた調和測度から得られる接続の曲率の評価に,松元重則氏による調和測度から得られる境界写像のアイディアを組み合わせたものである.ハルナックの不等式と等周不等式については,今回考えた曲面群の作用以外でも剛性理論において様々な研究や応用がある.特に対称空間上の調和関数はよく調べられており,今回の議論を一般化して対称空間を葉とする葉層構造について考察するための端緒を開くことができた. バラル=リホ氏と共同で取り組んでいるポアンカレ円板上の格子の切断射影法による測地線内のデローネ集合の研究については,平行移動法の代表的な力学系的量である、エントロピーについて計算することができた.その過程でこのデローネ集合の局所的な性質についても理解が進み,今後カオス的なデローネ集合を研究する上で有用と考えられる. ガエル=メニエ氏とのリー葉層構造の剛性については,これまで2通りの証明を既に与えているが,今回与えた証明が最も直接的で本質的なものと考えられる.ベッソン・クルトワ・ガロの重心写像を各葉ごとに行い,重心写像の族を構成する議論があり,理論としても興味深いと考えられる. ラモン=バラル=リホ氏,へスュス=アルバレス=ロペス氏とカルロス=メニーニョ=コトンとのカオス的な葉層付き空間に関する研究については,以前行ったラモン=バラル=リホ氏と共同で行ったカオス的な彩色グラフに関する研究のアイディアにより,見通しよく結果を得ることができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
3次元多様体上の一般のトートな葉層構造や高次元の非コンパクト型対称空間を葉とする葉層構造について,調和測度を用いて調べる.具体的には,3次元多様体上のトートな葉層構造については,普遍円周への基本群の作用やゴドヴィヨン=ヴェイ類の剛性的性質との関わりについて考察する.ハルナックの不等式や等周不等式を一般の3次元多様体上の葉層構造の調和測度に適用し,その剛性に関する帰結を調べる.また,実階が2以上の半単純リー群の格子について,球面などへの群作用が与えられたとき,その懸垂葉層の調和測度について考察する.特に,どのように接続や境界写像が得られるか調べ,剛性について考察する. デローネ集合に関する研究については,これまで考えてきたポアンカレ円板上より一般的な対称空間の場合に格子の切断射影法を考察し,デローネ集合を構成できるための条件について考察する. 高次元の非コンパクト型対称空間を葉とする葉層構造または葉層付き空間について,ベッソン・クルトワ・ガロの重心写像を用いてその剛性について考察する. カオス的な葉層付き空間の研究については,カオス的な彩色グラフを用いて構成できるリーマン面を葉とする葉層付き空間について,グラフの幾何的な性質と,葉層付き空間のカオス力学系的な性質について考察する.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのパンデミックにより,研究集会の参加を見合わせたため,旅費に余剰が生じた.次年度において,旅費として使用する予定である.
|