2020 Fiscal Year Research-status Report
Spectral analysis of quantum fields using Bogoliubov transformation
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20K03628
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 格 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (50558161)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子場 / スペクトル解析 / Bogoliubov変換 / ボゴリューボフ変換 / 対相互作用模型 / Pauli-Fierz模型 / 対角化 / 基底状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
Bogoliubov変換を用いた量子場の解析の研究を行った。Bogoliubov変換は,量子場の相互作用系において,生成・消滅作用素の2次の相互作用を相互作用のない形へと変換する技術であり,数学的には無限次元のシンプレクティック群のフォック空間上での表現である。この変換は1950年代から知られており,さまざまな量子場の模型の解析に使われてきたが,いまだに数学的に十分に整備されたとは言えない状況であった。 本研究では,場の2次のハミルトニアンを対角化するBogoliubov変換の数学的な構造を明確にし,広く適用可能な一般的性質を導出することを目標にし研究を行い,次の研究結果を得た: (1)量子場における抽象的ハミルトニアンを対角化するための基準を明確にした。(2)第二量子化作用素と場の二次項の和から作られるハミルトニアンに対して,上記の基準を適用するために必要な命題を証明した。(3)無限個の場の二次の相互作用項を持つハミルトニアンの自己共役性を一般的な条件のもとで証明し,さらに同一条件のもとでハミルトニアンがBogoliubov変換を用いて具体的に対角化されることを証明した。(4)さらに基底状態エネルギーの単純で具体的な表示を得た。(5)上記の一般的結果を,単純な対相互作用模型,量子ボース場と調和振動子の相互作用系,調和振動子型ポテンシャルを持つ双極近似のPauli-Fierz模型,並進不変な双極近似のPauli-Fierz模型に適用し,これらの模型が単純な条件のもとで対角化されることを証明した。(6)さらに並進不変な双極近似のPauli-Fierz模型については,基底状態が存在するための必要十分条件を与えた。 なお,これらは松澤氏,宇佐美氏(共に信州大)との共同研究の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にあるように,Bogoliubov変換の基礎的な構造を明らかにすることができた,上記の結果は2019年に得ておりarxivに掲載してあったものだが,2020年度には内容を整理・改良し,国際的な査読付き研究雑誌にアクセプトされた。 また,相対論的Pauli-Fierz模型の基底状態が存在することを証明した論文も査読付き研究誌にアクセプトされた。
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Strategy for Future Research Activity |
我々によるBogoliubov変換の結果によって多くのハミルトニアンが機械的に対角化できるようになった,今後はこの結果を用いて個別の模型の解析を行う。具体的には以下のものを研究する予定である。 (1)単純な対相互作用模型の基底状態,場の真空期待値,基底状態エネルギーの解析性の証明。この模型は対角化され,基底状態に関する様々な物理量の期待値の標識が得られたが,これらを更に数値的に表現するには摂動論が適用可能であることを示す必要がある。さらに摂動級数の収束半径も具体的に表すことができると考えられる。 (2)単純な対相互作用模型で結合関数が自由場のハミルトニアンの-1/2乗の定義域に含まれない場合の解析。この模型のハミルトニアンは自己共役であることがわかっている。さらにこの模型が対角化できるかどうかは難しい問題であると考えられる。 (3)単純な対相互作用模型の散乱理論の調査。量子場の模型でもvan-Hove模型は同様に解ける模型だが,この場合の散乱作用素は恒等作用素となり,非自明な散乱は起こらない。一方で対相互作用模型に対する散乱作用素は非自明であると予想される。 (4)スピン・ボソン模型の基底状態の存在証明。対相互作用模型は赤外発散の起こらない模型として知られている,この構造はスピン・ボソン模型と似ているため,この模型の基底状態の存在証明に使えることが予想される。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行のため,予定していた出張や研究会開催ができなくなったため,約26万円を次年度以降に繰り越すこととした。 この繰り越したものについては,今後の情報収集・共同研究のための出張経費やオンライン会議のための機材の充実のために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)