2021 Fiscal Year Research-status Report
Spectral analysis of quantum fields using Bogoliubov transformation
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20K03628
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
佐々木 格 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (50558161)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子場の数学的解析 / Bogoliubov変換 / 量子場の散乱理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,Bogoliubov変換と量子場における対相互作用模型の研究を行った。今年度,特に力を入れて研究したのは,Bogoliubov変換によって示された基底状態に関する種々の量の解析性の問題である。量子場の物理的研究の多くは摂動計算によってなされているが,その摂動級数が収束するのか,また収束するならその収束半径は有限なのかという問題がある。対相互作用模型はいわゆる,解ける模型なのでこの問題に対してより,具体的な解析を行うことが可能となる。次のことがわかった: (1)対相互作用模型の基底状態エネルギーは結合定数λについて解析的である。そして,その収束半径はある有限の値である。相互作用の形によってはその収束半径は具体的に書き下すことができる。 (2)基底状態は結合定数について解析的であるが,その収束半径が基底状態エネルギーと同じであることは示すことはできなかった。 後半の結果は,研究がうまくいかなかったということもできるが,逆に,基底状態の解析性をその収束半径まで確定させて求める問題には未知の構造が隠れていることを示唆しているとも考えられる。ここを解決することは今後の課題であろう。 上記以外には,対相互作用模型の散乱理論を研究し,漸近完全性が成り立つことを確認した。この結果についてはすみやかに学術論文としてまとめられるであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私が共同研究者と証明したBogoliubov変換を用いて対相互作用模型を対角化することが研究の出発点となっている。我々の先行研究によって対角化後のハミルトニアンの形が具体的に与えられたため,その先の研究を行うことが可能となった。そのような問題はいくつか考えられるが,申請者は量子場の解析性の問題にまず取り組んだ。上述のように基底状態エネルギーの解析性は予定通り証明できたが,基底状態については予想通りの結果を得られなかった。 基底状態エネルギーは,ある自己共役作用素のトレース型摂動の平方根ともとの自己共役作用素の差のトレースとして与えられるのであるが,これをまず結合定数で展開する必要がある。それを行うためには,作用素の平方根を積分形で書き直し,適切なレゾルベント公式を用いるのであるが,必要な技術はすでに私達の先行研究で得られていたため,数学的困難は殆どなかった。基底状態の解析性を示すためには,Bogoliubov変換で真空がどのような関数に変化するかをBogoliubov変換の構成にまで戻る必要がある。この変換を構成している作用素の解析性を示す段階で少し困難があることに気づいた。この作用素は結合定数が実数をとる場合には特異点はないのだが,複素平面に特異点がある可能性が排除できず,それが原因で収束半径を評価すると,予定より小さくなってしまうのだった。現在のところこの問題を解決するアイディアは無い。また,散乱理論にも取り組み,非常に一般的な条件のもとで漸近完全性を示すことができた。以上の結果はまだ論文にまとめるほど整理できていないので,これを整理して論文にするのが次の仕事である。
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Strategy for Future Research Activity |
数理物理の理論としては,物理的性質を導出することが大きな目標であるので,対相互作用模型に対する漸近完全性の証明を示しただけでは不十分である。具体的には種々の模型に対して散乱断面積を具体的に求め,これを比較することである。これは来年度以降の課題であろう。 また,予定していたBogoliubov変換を用いたスピンボソン模型の解析に着手することはできなかった。この模型は対相互作用模型に似ているがBogoliubov変換で対角化できないため,これを解析するためには新しいアイディが必要であると考えられる。 我々の研究しているのは,ユニタリなBogoliubov変換であるが,近年,特異的なBogoliubov変換の研究のarxivをいくつか見かけるようになった。これは量子場の非同値表現を与える重要な概念でもあるので,この方面の研究にも注目していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた研究集会参加,開催,出張が中止となったため,それに予定していた経費を繰り越すこととした。
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Research Products
(1 results)