2021 Fiscal Year Research-status Report
転送作用素の漸近理論構築による無限グラフを備えた非共形反復関数系の高次漸近解析
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20K03636
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
田中 晴喜 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60648567)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 転送作用素 / 漸近摂動 / 反復関数系 / 漸近分散 / 擬コンパクト |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,3つのプレプリントを作成した: (1) Haruyoshi Tanaka, General asymptotic perturbation theory in transfer operators (2) Haruyoshi Tanaka, Higher-order asymptotic behaviours of pressure functionals and statistical representations of the coefficients (3) Haruyoshi Tanaka, Quasi-compactness of Ruelle operators of summable potentials on arbitrary topological Markov shifts (1)は令和2年度に行っていた研究をまとめたものであり,(2)と(3)は令和2年度から令和3年度にかけての研究内容である.(1)の内容は,熱力学的特性量を導出する転送作用素の一般漸近理論の構築,及び,無限グラフ反復関数系の極限集合の次元と結びつくGibbs測度の高次漸近展開に関するものである.(2)はシフト空間上で定義されたポテンシャルに関する圧力汎関数の漸近展開(1次係数はGibbs測度による期待値,2次係数は漸近分散になることで有名なもの)について,3次以降の係数の統計的極限表示について調査したものであり,グラフ反復関数系の次元の漸近展開の係数の統計的意味づけなどを研究するための布石となるものである.なお,この内容はRIMSの研究集会「ランダム力学系および多価写像力学系理論の総合的研究」において発表した.(3)の内容はopen型転送作用素が擬コンパクトになるための十分条件を与える研究であり,将来無限グラフ反復関数系の退化を伴う摂動の研究を行うための重要なステップとなる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の目標であった,以前得られていた有限状態をもつopen型の摂動Markovシステムの研究結果を可算状態をもつ場合に拡張する研究は予想に反して時間がかかっているが,一部目標を達成しプレプリント「Quasi-compactness of Ruelle operators of summable potentials on arbitrary topological Markov shifts」を作成することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の目標であった,以前得られていた有限状態をもつopen型の摂動Markovシステムの研究結果を可算状態をもつ場合に拡張する研究は,有限状態から可算状態に一般化したことによる影響が予想以上に大きく,以前の研究手法の多くの点で修正・拡張が必要となっている.その一つがopen型転送作用素のスペクトルギャップの確認であり,既存の論文の多くで仮定している位相的条件を外す又は弱める必要があり,昨年度はその研究に時間を費やした.一部結果を得ることができたが,期待している結果を得るまでには時間がかかることが予想されるためそのまま継続するのではなく,当初予定していた次の研究の後に回すこととした.そこで令和4年度は,まず非共形な無限グラフ反復関数系の次元の推定に転送作用素の漸近摂動の手法を適用する研究を行う.一定の成果が得られた後,残されていたopen型の摂動Markovシステムに関する研究とその無限グラフ反復関数系への応用を進める.本研究課題の最終年度として,転送作用素の漸近摂動の手法とその応用の研究についてすべての課題を終わらせるべく取り組む.これらの研究と並行して,プレプリントの早期のアクセプトを目指すべく加筆・修正を随時おこなう.特に,昨年度作成したプレプリント「Higher-order asymptotic behaviours of pressure functionals and statistical representations of the coefficients」については,既存の多くの力学系にも適用できる可能性を秘めており,今後の仕事として他の応用例についても研究する.
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Causes of Carryover |
昨年度は一昨年度に引き続きコロナの影響により国内外の研究集会の出張が中止となり旅費の出費がなくなったため,次年度使用額が生じた.今年度は,対面による研究集会が再開され次第国内外の出張,及び昨年度から引き続いて関係図書・雑誌の購入と論文作成・情報収集のためのコンピュータ周辺機器の整備を行う予定である.
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Research Products
(2 results)