2020 Fiscal Year Research-status Report
Stochastic analysis focused on integration by parts formulas for jump processes
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20K03641
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
竹内 敦司 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (30336755)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジャンプ型確率過程 / マリアヴァン解析 / リーマン多様体 / 部分積分公式 / 分布の距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の初年度である2020年度は、主にリーマン多様体上のジャンプ型確率過程について、確率解析の立場から考察を行った。具体的には (1) リーマン多様体上のジャンプ型確率過程に対する部分積分公式の構築 (2) 確率微分方程式の解として定まるジャンプ型確率過程に関する Wasserstein 距離 に焦点を当てて考察を進めてきた。 (1) について、ジャンプ型確率過程の拡散項の影響のみに注目した解析を展開することで、よく知られた Bismut による公式が得られることを示した。さらにジャンプ項の影響にも注目して、新たな解析を進めることで、拡散項とジャンプ項の両方を含めた形での、新たな公式を導出することに成功した。この研究は論文にまとめ、学術雑誌に現在投稿中である。 (2) について、二つのジャンプ型確率過程がともに確率微分方程式の解としたとき、それらの確率過程に関する Wasserstein 距離について、方程式の係数に関する情報を用いて、上下からの評価を得ることに成功した。さらに考察の対象であるジャンプ型確率過程がユークリッド空間の場合だけでなく、リーマン多様体の場合も含めて考察しており、「リーマン多様体上のブラウン運動の従属操作で得られる確率過程と、リーマン多様体上の標準的ジャンプ型確率微分方程式により定まる確率過程は、分布が異なる」ことを示すことができた。この研究は現在、論文にまとめる作業をしている最中であり、終了し次第、学術雑誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リーマン多様体上の確率過程の解析は、時刻に関して連続なものに焦点を当てられることがほとんどであり、ジャンプ型確率過程については、世界的に見てもそれほど多く研究されてきたわけではなかった。本研究ではその部分を確率解析の立場から解明することを主目的としているが、研究期間の初年度である2020年度は、上述のように順調に研究結果を得ることができている。得られた研究結果は、今後の研究の進展の基礎をなす部分でもあるので、本研究の研究期間の初年度にそのことが得られたと言うのは、大変重要である。 新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて、国内および国外の研究者たちと直接議論を行う機会を設けることはきわめて難しい状況にある。そのような中でも、オンラインで研究者たちと議論を行うことで、研究面での議論、研究情報の交換も、規模は小さいながらも工夫して行っており、得られた研究結果の客観的なコメントを踏まえて、今後の研究につなげてゆきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
リーマン多様体上のジャンプ型確率過程について、その密度関数の詳細な性質を確率解析の立場から調べてゆきたいと考えている。具体的には、2020年度に得られた部分積分公式を経由することで、密度関数の上からの評価につなげてゆくこと、さらに部分積分公式を繰り返し適用することによって、密度関数の展開公式を導出することに持ってゆきたいと考えている。 さらに最近、色々な分野で用いられている「マーク付きホークス過程」と呼ばれる自己励起型ポイント過程について、研究代表者の竹内が以前の研究で得た部分積分公式を用いることによって、その分布の詳細な性質について調べてゆきたい。 2020年度は研究期間の初年度であり、また新型コロナウィルスの影響を受けた最初の年でもあったので、オンラインによる研究者たちとの議論、情報交換などを手探りで行ってきた面がある。その中で得られたノウハウを今後、積極的に活用し、もう少し幅を広げた形で役立ててゆきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルスの影響により、当初予定していた国内出張および国外出張がほとんど実施することができなかった。そのため予定していた旅費がほぼそのままの状態となってしまい、未使用の額が生じてしまった。2021年度以降も状況がどのようになるかという見通しは全く立たないが、年度内に改善されれば少しずつ出張を織り交ぜながら、対面による直接的な議論、研究情報の交換など行い、研究をさらに前に進めてゆきたいと考えている。
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