2020 Fiscal Year Research-status Report
非可換確率空間における分布特性量の変形と独立性の対応
| Project/Area Number |
20K03649
|
|---|
| Research Institution | Ochanomizu University |
|---|
Principal Investigator |
吉田 裕亮 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10220667)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
| Keywords | 非可換確率論 / 作用素環論 / 関数解析学 / 分布特性量 / 量子変形 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では, 非可換確率空間における独立性の概念を Fisher 情報量やエントロピーなどの分布特性量の視点から捉える新たな手法の開発を目指している. 独立性の変形と分布特性量を変形の対応に着目するが, まず自由独立性と通常独立性を補間する q-変形独立性に関して, 特性量の変形が如何に振舞うかを Meixner 分布族をテスト分布として具体的に調べることから始めた.
令和 2 年度は, 今までの q-変形 Meixner 分布の構成法である q-変形 Fock 空間上でq-生成・消滅作用素を用いた q-Meixner 確率変数に, さらに変形パラメータを加えた (q, ｔ)－変形の応用を愛知教育大の淺井氏と共に行ない, 研究成果を学術論文に公表した. また, 同氏とは別の q-変形の拡張にあたる B型 Fock 空間すわなち (α, q)-Fock 空間の場合には Meixner 分布がどのように変形されるかの調査を Poisson 分布の場合に再考し, 次年度への準備も行った.
また本研究課題と関連する非可換確率論分野の研究として, 自由独立性の下での Stein 作用素による分布の特徴付け問題の調査を行い, 自由 Meixner 分布族に関してはこの Stein 作用素による新たな特徴付けが可能であることが分かった. この成果に関しては現在, 学術論文への投稿を行うべく取り纏めを行っている. 加えて 令和2年12月にオンライン研究集会「非可換確率論とその関連分野」をオーガナイザの一人として開催し, 国内の関連研究者の最新の研究動向の調査も行った.
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数学の研究においては, 情報通信技術が発達した, 今日でも関連研究者と直接に会っての研究討議は非常に重要なプロセスである. このコロナ禍のため, 令和 2 年度はこの重要なプロセスが実施できない状況にあった. このような状況下においても, テスト分布としての Meixner 分布の変形に関する調査が実施できたこと, ならびに研究成果の一部は学術論文として公表できたことから進捗に大きな問題はないと判断している.
また, オンラインではあるが関連研究会を開催し, 当該分野の研究動向の把握も遅延なく出来ているものと考えている.
|
| Strategy for Future Research Activity |
令和 3 年度以降の研究実施計画に関しては, 当初予定通りであり, 特に, 研究計画を変更すべき事項あるいは研究を遂行する上での大きな問題は現時点では発生していないものと考えている. したがって, 今後は変形分布の特性量と独立性の関係について調査を進めていく予定である. 特に Meixner 分布族には Fisher 情報量やエントロピーによる特徴付けが知られている重要な分布も含まれている. まず令和 3 年度には, テスト分布族でもある Meixner 分布族の変形と特性量の変形に関して, その対応を明らかにして行くことを目標とする.
また, 本研究課題に関する研究成果に関しては, オンラインを含めて国際的な研究集会での発表を行うとともに, 国外の関連研究者との研究討議の機会の確保に努めて行きたい. また, 国内の関連研究者とは, 緊密な研究情報の交換を行うとともに, 研究動向の把握のための研究集会の開催（オンライン開催も含む）も計画している.
|
| Causes of Carryover |
当初は, 令和 2 年度の夏期にイギリス(Lancaster) において Blitvic 氏と (q,t)-変形に関する研究討議ならびにポーランド(Bedlewo) における非可換調和解析に関する国際研究集会に参加・成果発表予定をしていた. しかし, コロナ禍のため, これらの外国出張を行うことができなかったため, 予定していた旅費が次年度に回った.
ポーランドでの国際研究集会は令和 3 年度に延期されているが, 現時点では今年度の開催が厳しいものと判断している. そこで, 令和 3 年度には, 海外研究者とのオンラインでの研究討議をより効率的かつ充実した環境で行えるようにするために, ペンタブレット等の入力装置ならびに, 書籍等を含む最新の関連研究資料の導入に充てるようにする.
|
Research Products
(3 results)
