2021 Fiscal Year Research-status Report
New development of analysis and geometry on convex cones
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20K03657
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊師 英之 大阪市立大学, 数学研究所, 教授 (00326068)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | グラフィカルモデル / ウィシャート分布 / コーダルグラフ / ベイズ統計 / ハルトークス領域 / 強可視的作用 / ベルグマン核 |
Outline of Annual Research Achievements |
無向単純グラブによって多変量正規分布の成分間の条件付き独立性を指定した統計モデルであるガウシアングラフィカルモデルに成分の置換に関する不変性の制約を加えた「色付きグラフィカルモデル」について研究し,進展があった.とくに,グラフが完全である場合にベイズ統計によるモデル選択を論じた論文が,数理統計のトップジャーナルである Annals of Statistics に掲載決定となった.一方でグラフがコーダルの場合に,モデルのパラメータ集合である凸錐(ある線型な制約条件をみたす正定値対称行列の集合)が,これまで考えてきた「準コレスキ構造」の中でも特に代数的に扱いやすい構造をもつことが判明した.ポイントは,コーダルグラフのみから定まる構造と,置換の不変性に依存して定まる構造という二種類が存在することである.パラメータ集合上の事前共役分布の正規化定数は凸錐上のΓ型積分によって明示的に計算できるが,今回の結果により明示公式はより簡明な形となった.以上はアンジェ大学(フランス)のPiotr Graczyk 氏,ワルシャワ工科大学(ポーランド)の Bartosz Kolodziejek 氏との共同研究である. 一方で,有界等質領域に関連する複素解析についても有望なアイディアの展開があった.カルタン・ハルトークス領域には正則自己同型群が強可視的に作用していることに着目し,その類似として有界等質領域上の接ベクトル束(より一般に同変ベクトル束)においてハルトークス型の領域なるものを導入した.これらの領域が強可視的作用を許容することと,カルタン・ハルトークス領域について知られているような具体的な解析(ベルグマン核の明示公式,ケーラー・アインシュタイン計量の記述など)に関係があるか,が今後考察するべき基本的な問題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で海外の研究者との共同研究が対面で行えないという制約はあったが,研究には一定の成果があった.とくに色付きグラフィカルモデルについて,完全グラフの場合に論文がトップジャーナルに掲載決定となって一区切りついたことが重要な進展である.さらに,コーダルグラフの場合の研究が進み,正規化定数の解析的明示公式が得られたことの学術的なインパクトは大きい.この場合のパラメータ集合である凸錐の解析を下支えする代数構造が比較的単純なアルゴリズムによって表示できることも,今後の研究の展開において重要なポイントになると思われる. 複素解析について,有界等質領域上の正則ベクトル束の中の領域としてハルトークス領域の類似物を定義したことは,有望なアイディアにみえる.実際,その定義は実に自然なので,カルタン・ハルトークス領域と同様の豊かな解析が展開できると確信しているが,具体的な結果を出すのは今後の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
与えられたデータに最も適合するような色付きグラフィカルモデルを探すというモデル選択が基本的な問題である.まずデータの条件付き独立性を表す無向グラフを決定し,その後にこのグラフを保存する置換群のなかで最適のものをベイズ統計的な方法で選択するという順番で考えることとして,後半の置換群の探索が主問題である.グラフが完全のときの我々の結果をグラフがコーダルの場合にも拡張するのが方針であるが,まずはコーダルグラフの中でも置換群の構造が分かりやすいものについて結果を得たい.また,Γ型積分の公式を応用して,モデルの尤度比検定についても具体的な公式を確立することを目指す. 複素解析については,有界対称領域の接ベクトルでベルグマン計量が1未満のものの全体を複素ベクトル空間の中の有界領域とみて,そのベルグマン核を求積する.この領域上のベルグマン空間が正則同型群の作用に関して無重複に分解し,それぞれの既約部分空間の再生核を表現論的な考察によって決定するというのが方針である.この計算がうまく機能すれば,有界対称領域の接ベクトル束の代わりに群不変なエルミート計量をもつベクトル束について同様の計算を試みる.一方で,有界等質領域についても議論が成り立つかを,強可視的作用の存在と併せて考察することも重要な問題である. 準コレスキ構造を許容する正則凸錐を底とするチューブ領域について,Γ型積分公式を応用してある種の荷重付きベルグマン核を求積することが出来る.その計算は等質ジーゲル領域の公式と類似しているが,荷重の意味を明確にすることが大きな課題である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により,海外の共同研究者との対面による研究討議や国際研究集会の参加が不可能になり,計画していた海外出張が取りやめになった.次年度は,共同研究者の招へいに使用することで,成果を挙げながら予算を執行していきたい.
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Research Products
(12 results)