2022 Fiscal Year Research-status Report
ランダムシュレーディンガー作用素及びランダム行列の準位統計
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20K03659
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中野 史彦 東北大学, 理学研究科, 教授 (10291246)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 準位統計 / ランダムシュレーディンガー作用素 / クロック過程 / アンダーソン局在 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) Random Dimer Model の準位統計:ランダムダイマーモデルでは、臨界エネルギーにおいてリアプノフ指数が0になる。そのエネルギーにおける準位統計がクロック過程になることを示した。Peter Hislop(Lexington), Xiaolin Zeng (Strasbourg)との共同研究。 (2) d次元ランダムシュレーディンガー作用素において、ポテンシャルが原点からの距離のアルファ乗で減衰しているとする。アルファがある臨界値を超えると本質的スペクトルは自由ハミルトニアンのそれと一致することを示し、そのときの最大固有値の存在確率の漸近挙動を求めた。一方でアルファが臨界値より小さいときは本質的スペクトルは実軸全体と一致し、自由ハミルトニアンのスペクトルの補集合上ではアンダーソン局在することを示した。このときは大きな固有値をスケーリングして得られる点過程はポアソン過程に収束する。川合海翔、丸山祐虎(東北大)との共同研究。 (3) 1次元アンダーソンモデルでの中心極限定理の証明と、減衰ポテンシャルを持つ系での知られた結果との比較を行なった。ホッピングがランダム性を持つ場合も、Popescuの手法の改良により中心極限定理を証明できる。また、ガウシアンベータアンサンブルの経験分布の中心極限定理の別証明をPopescuのモーメント法を用いて与えた。石川雅雄(岡山大)、増子拓士、丸井憂真、丸山直紀(東北大)との共同研究。 (4) 準古典近似を用いた輸送理論:ランダムシュレーディンガー作用素において輸送係数を準古典近似を用いて計算する研究に着手し、まずリュービル作用素を用いた問題の定式化を行なった。Max Lein, Stefan Junk(東北大)との共同研究。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
減衰ポテンシャルを持つ1次元ランダムシュレーディンガー作用素において、固有値・固有関数のスケール極限を持つ研究はある程度完成した。フランスでの研究集会で様々な研究者と討論により、研究対象を広げて、現在は様々なランダムシュレーディンガー作用素の準位統計を考え、スペクトルやアンダーソン局在との関係を調べることと、ランダム行列モデルをランダムシュレーディンガー作用素の手法を用いて研究することを行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) ランダムダイマーモデルの準位統計(続き):臨界エネルギー以外での準位統計を考え、そのポアソン過程への収束を示す。ポテンシャルの分布が特異であるため、困難が予想される。 (2) ランダムホッピングモデル、ランダムバンドモデルにおける準位統計を考える。前者は(1) の延長線上にあり、後者はその経験分布の収束をより強い意味で収束することが鍵になる。 (3) 準古典近似を用いた輸送理論:輸送理論の枠組みを準古典近似を用いた描像を用いて定式化し、電気伝導度を表す公式を得る。
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Research Products
(14 results)