2020 Fiscal Year Research-status Report
対称空間上のシュレディンガー作用素に対する幾何学的散乱理論
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20K03664
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
貝塚 公一 日本医科大学, 医学部, 講師 (30737549)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 対称空間 / スペクトル解析 / シュレディンガー作用素 / ディラック作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
シュレディンガー作用素の平方根に相当するディラック作用素のスペクトルを非コンパクト型対称空間上で考察した. 非コンパクト型対称空間上のシュレディンガー作用素のスペクトル分解定理であるプランシュレル定理とは異なり, ディラック作用素に対するプランシュレル定理には極小放物型部分群以外の尖形放物型部分群に対応する主系列ユニタリ表現も現れる. 非コンパクト型対称空間上のディラック作用素の尖形放物型部分群に応じたスペクトルの解析手法の構築は, シュレディンガー作用素の各放物型部分群に付随する無限遠境界対称空間に応じた幾何学的散乱理論構築の土台となり得るものと考えられる. ディラック作用素に関するスペクトル解析の研究については, 以前にいくつかの具体的な対称空間でスペクトルの構造を決定しており, それらの具体例に対する結果と一般の非コンパクト型対称空間の場合のスペクトル構造の予想について研究集会「微分方程式の総合的研究」で研究報告を行った. そして, ある特別なユニタリ指標が非特異, 特異となる場合に応じて, 尖形放物型部分群に対応する主系列ユニタリ表現を解析することで, 一般の規約非コンパクト型対称空間上のディラック作用素のスペクトル構造を決定することができた. さらに, ディラック作用素に対して他の規約ユニタリ表現とのテンソルを取ることで得られる, 捩れディラック作用素のスペクトルの構造について考察を進めている. 今後は, ディラック作用素の解析に用いた, 放物型部分群と対応する主系列ユニタリ表現の解析方法を基に, シュレディンガー作用素の各放物型部分群に付随する無限遠境界対称空間に応じた幾何学的散乱理論について考察する計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症を理由とした業務変更に対応するために多くの時間を割くこととなり, 本研究課題に対するエフォート率が当初の研究計画よりも大きく低下し, 進捗状況に遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の一つの大きな目標となる, 対称空間の無限遠の各境界対称空間に応じた散乱理論の構築に深く関わる論文が, 近年他の研究者から出版された. この論文の議論を精査し, ディラック作用素の解析において用いた放物型部分群と主系列ユニタリ表現に対する解析方法を土台にして研究課題に取り組むことで, 研究計画初年度の研究の遅れを取り戻す方針である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を理由として, 当初の予算計画で参加予定であった研究集会は開催中止, あるいはオンライン形式へ変更となった. その結果, 物品費に関しては当初の計画通りに執行したが, 旅費については執行する機会が無かった為に, 次年度使用額が生じた. この繰り越し分については, もし現地での研究集会の開催が再開された場合には, 本研究課題に関連する研究集会への参加のための旅費として執行し, そうでない場合には本研究課題の遂行に関連する数学の専門書の購入のための物品費として次年度に使用する計画である.
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