2022 Fiscal Year Research-status Report
対称空間上のシュレディンガー作用素に対する幾何学的散乱理論
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20K03664
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
貝塚 公一 日本医科大学, 医学部, 講師 (30737549)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 対称空間 / スペクトル解析 / シュレディンガー作用素 / ディラック作用素 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究で得た、非コンパクト型対称空間上のディラック作用素の連続スペクトルの決定と、いくつかの特別な型の非コンパクト型対称空間上におけるディラック作用素の一様レゾルベント評価について、「日本数学会年会(2023年3月、函数解析学分科会)」において研究成果の報告を行った。また、非コンパクト型対称空間上のシュレディンガー作用素に対する一般化固有関数の無限遠での漸近解析について研究した。先行研究の論文Kaizuka (J.Funct.Anal.(2019))では、レゾルベントの漸近展開から一般化固有関数の漸近展開を導き、幾何学的散乱行列を考察した。先行研究では、非コンパクト型対称空間を動径方向にコンパクト化して、正則な点からなる球面の一部を無限遠と考えて幾何学的散乱行列と漸近展開を考察した。定量的なノルム評価に応用するには十分な解析ではあったが、非コンパクト型対称空間が持つ幾何学的な特異性を全て反映したものではなかった。そこで、非コンパクト型対称空間のMartinコンパクト化から得られる無限遠境界に関して、シュレディンガー作用素の一般化固有関数の漸近挙動を解析した。議論の途中で漸近解析の議論に一部形式的な部分があるが、結果としてMartin境界上で定義された(ある種の)幾何学的散乱行列を明示的に構築することができた。新たに得られた幾何学的散乱行列は、先行研究で得られていた散乱行列を正則な点からなる球面上からMartin境界上に連続拡張した作用素となることも分かった。新たに得られた散乱行列の幾何学的な性質については研究継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス(COVID-19)感染症を理由とした業務変更に対応するため、研究計画の初年度と次年度にやや遅れが生じていたが、その影響が今年度の研究に大きく影響し進捗状況に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究手法のより具体的な方向性と研究のために必要な技術的道具立てが明らかとなりつつある。また、一部の特別な性質を持つ非コンパクト型対称空間では既に結果が得られているため、関連する分野の先行研究の論文を参考にして議論の一般化を目指すことで、研究計画の遅れを取り戻す予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は昨年度からの次年度使用額が繰り越されており、主に旅費として予算を執行する予定であった。しかし、今年度においても新型コロナウイルスへの感染による社会的影響が完全に無くなったわけでなく、自身が講演あるいは研究集会の代表者である場合を除き、対面での研究集会への参加を自粛した。その結果、次年度使用額が生じることとなった。この繰越分については、主に対面での研究集会への参加のための旅費として使用する予定である。
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