2020 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical analysis on the linear response for solutions of mean field equations
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20K03675
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
大塚 浩史 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20342470)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 線形応答 / 点渦系 / 平均場 / 非線形楕円型方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
平均場とは、離散的な存在である粒子系において、粒子数を無限大にした極限(平均場極限)に現れる粒子の連続的な分布関数のことである。平均場方程式とは、このような平均場が満たす方程式であり、粒子系が平衡状態にある場合、その多くは半線形楕円型偏微分方程式になる。線形応答とは、平衡状態にある物理系に対し、平衡状態を崩すことなく外力により摂動したとき、状態に生じる変化の外力に関するガトー微分のことである。すなわち本研究の対象は、半線形楕円型偏微分方程式の摂動問題及び摂動に関する線形化問題である。 このような対象は偏微分方程式の研究として一般的だが、本研究の特色は、この一般的な対象を、平均場の由来である粒子系に遡って摂動を加え、粒子系の線形応答を求め、その線形応答の平均場極限を通して考察することにある。すなわち、粒子系から見て、粒子数を無限大にする平均場極限と摂動系のガトー微分という二つの極限操作の順序による差異の解明が、本研究の目的である。 このような極限操作の順序交換の考察は解析学の標準的な問題意識だが、偏微分方程式の研究として考察された前例は少ないと思われる。一方物理学では、原子配列が不規則に揺らいだ状態が固体化した非晶質(アモルファス)に対して、類似の考察がされている。極限操作が可換になる粒子系の条件や可換にならない例は、解析学と物理学の双方に興味深い事実を与えると思われる。 研究実施計画では、研究期間当初は、主にこれまでの研究代表者の研究の精密化である平均場方程式の基礎研究を進める予定であった。初年度である今年度は、残念ながら目に見える成果を残すには至らなかったが、予定通り先行研究の調査を進められた。また、遠隔開催された研究集会、公開セミナーに積極的に参加し、近年注目されているニューラルネットと正準統計力学との関係など、粒子系の平衡状態に関する理解を深めるように努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、年度当初からのCOVID-19に対する対応に追われ、残念ながら目に見える成果を残すことは出来なかった。しかし、研究連絡を遠隔で行うための環境整備を進めると共に、共同研究の継続に努めた。また、遠隔開催された研究集会に積極的に参加し、研究計画にある平均場方程式の基礎研究(平均場方程式の摂動問題の解の非退化性、一意性など)などの情報収集を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、平均場方程式の基礎研究(平均場方程式の摂動問題の解の非退化性、一意性など)を進めると共に、上記極限操作の順序交換の解析を進める。混合点渦系や、相互作用を特異性のないものに適宜変更したものについても柔軟に研究を進める予定である。十全ではないかもしれないが、インターネットを用いた遠隔による研究連絡も活用し、研究遂行に努める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により予定されていた国内外への出張が取りやめになったが、研究代表者が次年度(2021年度)にサバティカルを取得するため、次年度にその多くを実現できると判断し、直接経費を残すことにした。2021年度は、COVID-19の状況に従い予定されていた出張をできる限り実施し、それが難しい場合は、研究環境の整備を進める。
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