2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of propagation phenomena and singularity of the logarithmic diffusion equation
Project/Area Number |
20K03708
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
下條 昌彦 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (40588779)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 対数拡散方程式 / 伝播現象 / 特異性 / 進行波 / 全域解 / 消滅解 / パルス波・フロント波 / 単安定・双安定 |
Outline of Annual Research Achievements |
対数拡散方程式は未知関数の負ベキを拡散係数にもつ非線形放物型方程式である.未知関数の値がゼロに近付くと拡散係数が発散して特異性が生じ,解は有限時間で消滅することが知られている.対数拡散方程式は,薄膜運動や2次元リッチ流と関連している.また,ボルツマン方程式のカーレマンモデルの特異極限でも得られる方程式である.一般に非線形放物型方程式は拡散項と反応項からなることが多い.本研究課題の目標は,単安定型の反応項や双安定型の反応項をもつ対数拡散方程式の,解のダイナミクスを解明することである.本年度は単安定や双安定の反応項をもつ対数拡散方程式のフロント型の進行波解を考察した.具体的には以下のような成果を得た.
(1)単調なフロント型進行波解の存在と一意性を厳密に示した.(2)得られたフロント型進行波解と無限遠で同じ漸近条件を満たす初期値を任意に与えたとき,解が時間無限大まで一意的に存在することを証明した.(3)さらに,時間無限大の極限で,解が進行波解の一つに収束することを証明した.
これらは東京工業大学の柳田英二氏,岡山大学の物部治徳氏,神奈川大学の松澤寛氏との共同研究である.共同研究では,放物型方程式のスツルムの交点数理論を用いてフロント波解の近傍におけるダイナミクスを特徴づけた.この方法は,空間1次元ならばLyapunov関数を構成できないさまざまな非線形問題に対しても適用できる.今後,パルス解の安定性を考える足場になることは間違いない.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた数学的な成果は,論文として投稿して受理された.
申請当初は2021年度に予定していた,遠方で指数的に減衰する初期値に対する単安定の反応項を有する対数拡散方程式の解の挙動についても,順調に研究が進展している.また,その研究過程で,全域解の分類に関するLiouville型の定理を確立した.
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に計画していた課題の概要はほぼ完成している.秋までには証明の細部を詰めて,論文としてまとめる.
これまでの研究により全域解の分類定理が,解のダイナミクスを統一的な観点から理解する上で有用であることが明らかになってきた.そこで,単独方程式の研究と平行して,一般の連立系の反応拡散方程式に対しても,全域解の分類問題を考察し,その基礎理論となるLiouville型の定理を確立する.そして2種や3種の反応拡散系の伝播問題に対して応用する.この研究は淡江大学(台湾)のJ.S.Guo氏と一緒に進める.
|
Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルスの影響により,3月に予定していた台湾への出張は延期になった.カナダで開催された国際研究集会の講演や国内研究集会の講演もすべてZoomでのリモートで行われた.また予定していたアメリカでの研究集会も中止となった.このため,出張旅費が未使用のままである.
一方で,研究代表者は大学を異動した.そのため,研究室備品や書籍などが新たに必要となっている.また,国内外のリモート研究集会の発表で用いる機器も揃える必要性がある.未使用となった予算はこれらの設備投資,または延期となった研究集会の旅費に充てる予定である.
|