2022 Fiscal Year Research-status Report
有向グラフ上の詰込み・分割問題に対する新手法の開発とその応用
Project/Area Number |
20K03720
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
千葉 周也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (80579764)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 有向閉路詰込み / ハミルトン閉路 / 次数条件 / 禁止部分グラフ条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 指定された個数からなる指定された長さの有向閉路詰込みに対する次数条件 1984年にEl-Zaharによって提起された「指定された個数からなる指定された長さの閉路分割」に対する次数条件を有向グラフ版へと拡張する方法について検討することで、「指定された個数からなる指定された奇数長の有向閉路詰め込み」に対する最良な次数条件を、前年度までに定めていた方針によって実際に与えることに成功した。本研究成果は、閉路詰込み問題に関する1997年のBrandtらの結果(J. Graph Theory)および2018年のChiba-Yamashitaの結果(SIAM J. Discrete Math.)の共通の一般化となるものであり、詰込み問題に対する新手法の開発において新たな知見を見出したといえる。 (2) ハミルトン閉路の一般化およびグラフの連結度と独立数 有向閉路分割問題に対する新たな研究の方向性を模索するために、無向グラフ上のハミルトン閉路問題に関する既存の研究成果の精査を行なった。特に、ハミルトン閉路や辺支配閉路、指定された頂点を通る閉路など、閉路に関する多くの概念を包括する“intersecting cycle”と呼ばれる新しい閉路の概念を導入し、その閉路の存在性に対するグラフの連結度と独立数の関係を明らかにし、学術雑誌(Discrete Math., 2022)を通してその研究成果を発表した。 (3) グラフの分割問題および関連問題における十分条件 グラフ上の閉路分割数・道分割数に対する禁止部分グラフ条件や星グラフの族の分割に対するグラフの最小次数とサイズに関する条件等について考察し、学術雑誌(Electron. J. Combin., 2022 & Graphs Combin., 2023)を通してその研究成果を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) (研究実績の概要で述べたように)「指定された個数からなる指定された奇数長の有向閉路詰め込み」に対する最良な次数条件を与えることに成功し、さらには、2021年度に提案した「指定された個数からなる有向閉路または位数2以下の有向道による有向グラフの分割」に対する次数条件の結果を論文としてまとめ上げ、学術雑誌に投稿することもできた。これらは、現在構築段階にある有向グラフの詰込み・分割問題に対する新手法の有用性を示す研究成果である。よって、その手法の応用可能性も含めて本研究は着実に進展していると言える。
(2) ハミルトン閉路の一般化問題について考察することにより、有向グラフの詰込み・分割問題における新たな問題(研究の方向性)を提起することが可能となったので、これまでに得られた研究成果における手法のさらなる改良を目指すことができ、幅広い範囲で適用可能な新しい手法の理論的枠組みの構築が期待される。
以上のことから、2022年度に得られた研究成果は本研究課題の解決およびその発展に繋がるものだと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) 現在までに得られた研究成果の証明手法の汎用性の高さを示すために引き続き他の類似問題について考察する。特に、2018年のChiba-Yamashitaによる「無向グラフ上の閉路(または道)詰め込みおよび閉路(または道)分割」に対する次数条件のサーベイ論文における結果の有向グラフ版について考察することで、包括的な証明手法の枠組みを構築する。また、その手法から得られる無向グラフ上の詰込み・分割問題に関する結果を精査することで、有向グラフと無向グラフに共通する本質的な手法の開発を目指す。
(2) これまでに得られた研究成果のうち未発表のものも含めて、本研究課題に関連する成果を学術雑誌や国際・国内会議(遠隔参加も含む)を通して他の研究者に広く周知する。それにより、他研究者と最新の研究情報の交換を行い、本研究課題の問題点・研究方針について議論する。
|
Causes of Carryover |
理由:当初参加する計画には入れていなかった国際会議において、2023年度に特別講演を行うことが2022年度の途中で決まり、そのための旅費確保として2022年度の使用額に調整を行ったため。
使用計画:上述の国際会議に参加するための旅費の一部として使用する。
|