2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on multiple zeta value and calculation technology by a formula of systems of Boolean polynomial equations
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20K03727
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
町出 智也 国立情報学研究所, ビッグデータ数理国際研究センター, 特任研究員 (60614526)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多重ゼータ値 / Boolean多項式 / ガウスの消去法 / 彩色問題 / Alon-Tarsi多項式 / 充足可能性問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、多重ゼータ値の行列のランク計算のアルゴリズムを改良して、重さ22の場合のランクを計算した。更に深さで階層化した2元体上のベクトル空間の基底も同時に計算した。階層化したベクトル空間ではより精密な計算を必要とし困難と思われるため当初は計画はしていなかったが、ガウスの前進消去を発展させることにより成功を収めた。成功の理由は適切な列の順番が発見できたことに由来する。その基底は本質的にHoffman基底である。有理数係数の場合はBroadhurst-Kreimer予想により保型形式とは関連するがHoffman基底とは無関係と考えられているが、2元体の場合では異なる振る舞いをすることがわかった。 また、Boolean多項式の連立方程式の公式がグラフの彩色問題に現れるAlon-Tarsi多項式と関連することがわかった。(Alon-Tarsi多項式の存在は小関健太氏にご教示いただいた。)各頂点に約(log k)個の変数を対応させることによりk彩色問題を(log k)次のBoolean多項式の連立方程式に変換できる(ただしlogの底は2)。そしてBoolean多項式の連立方程式はたった一つの多項式で表現できる。その多項式がAlon-Tarsi多項式と関連する。二つの多項式には次の異なる箇所がある。Alon-Tarsi多項式は整数係数であり彩色問題が「多項式が0にならない」ということと同値である。一方Boolean多項式では、値が1(真)と0(偽)しかないため「多項式が1になる」と同値になる。それにより、Alon-Tarsi多項式の場合は探索的に解を探す必要があるが、Boolean多項式の場合は純代数的に考察できる。 上記の研究はともに当初の計画では想定していない事柄ではあるが、予想外の発見で今後の発展が期待できるため優先して研究した。そのため当初予定していた研究は休止した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文の執筆が遅れているのでこの区分にした。ただし遅れている理由は予想外の新たな発見(ガウスの前進消去の改良や彩色問題のAlon-Tarsi多項式との関係)が原因であり、ポジティブな理由である。以前と同様に専門外の分野の知識が必要になり、論文をまとめるのが難航することが予想される。しかし焦ると結局時間を浪費することになるので、丁寧な作業を心がけたい。研究自体は当初の計画の範疇を超えて進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年に向けて多重ゼータ値とBoolean多項式の論文2本を執筆する。またその結果を研究集会で発表する。実際5月に開催される集会に参加し研究成果を発表する予定である。余裕があれば研究結果の応用や発展を考察する。
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Causes of Carryover |
以前と同様コロナウイルスの影響により研究集会がオンライン上で行われ旅費を使用する機会がなかった。次年度は現地で行われる集会が増えるため積極的に参加し、成果発表と情報収集を行う。
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