2021 Fiscal Year Research-status Report
自発的パラメーター調整機能を有する環境適応型移動運動モデルの提案
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20K03730
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
上田 肇一 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (00378960)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 数理モデル / 自律分散システム |
Outline of Annual Research Achievements |
生命システムが示す「未知の環境変化に対する適応性」を実現するシステムを構築するためには,システム-環境間の入出力関係を自発的に決定する仕組みを理解する必要がある。本研究では,生命システムの(脳のような)情報処理器官の入出力関係がシステム内部状態によって決定される事に着想を得て,システム内部変数のみの記述によりシステム-環境間の入出力関係を決定するアルゴリズムを提案する。今年度は,振動子ネットワークの結合係数を推定する自律分散モデルを提案した。提案モデルは,振動子ネットワークモデルと同一のネットワーク構造を有する学習システムからなり,学習システムのノードは対応する振動子ネットワークの振動子から信号を受け取る。数値実験の結果,ネットワークの結合係数を淘汰アルゴリズムを用いて変化させることで,振動パターンを再現することに成功した。しかし,本研究で用いた振動子ネットワークモデルでは,並進対称性に起因する最適解の連続的な存在により一般的にはパラメーター推定に失敗することが明らかとなった。そこで,振動子ネットワークモデルおよび学習システムに対して同一のカオス軌道を外部摂動として振動子に加えるモデルを提案した。外部摂動強度をコントロールパラメーターとして数値実験を行い,摂動強度と推定精度向上の関連性を議論した。また,外部摂動として周期軌道を用いた場合には推定精度の向上は小さいため,カオスが示す複雑な振る舞いが重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
淘汰アルゴリズムを組み込んだ自律分散モデルにより,振動子モデルに対するパラメーター推定アルゴリズムに対する知見を蓄えることができた。また,環境適応型移動運動モデルに適用するために,バネと振動子の結合によって構成される空間2次元移動運動モデルを作成し,数値実験を行う準備が完了した。以上の結果より,本研究は計画通りに進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
環境適応性を示すことを確認するために,システムパラメーターを時間とともに変化させた際も,その変化に応じて移動運動を維持するよう自動的にパラメーターが調整されることを確かめる。また,細胞内で観察されるような収縮弛緩運動によって観察される一方向の物質輸送に対して提案モデルを適用し,物質流動を最適化させるパラメーターの自動探索と,自動探索を実現するための数理的条件を解析する計画である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により出張機会が減少したため旅費の使用額が減少した。次年度は研究発表,研究打ち合わせに使用する計画である。
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Research Products
(2 results)