2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K03731
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
今村 悠里 金沢大学, 数物科学系, 助教 (40633194)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 確率微分方程式 / 到達時間 / 分布の対称性 / 対称変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では確率過程の到達時間分布を考える.金融市場における債権などの価格や,派生するリスク,保険は拡散過程やレヴィー過程によってモデル化される.確率過程がある範囲に到達する時間の分布を得ること,およびその性質を明らかにすることを目標としている.到達時間は境界における過程の分布に関する対称性を用いることにより,分布関数が経路依存のない形,つまり確率過程が最後の時間にいる場所の情報のみで与えられる期待値と表される.確率過程と到達する領域によって与えられる変換(Carr-Nadtochiy 変換)を明らかにすることで,到達時間分布のある表現を得ることができる.この表現によって派生商品のヘッジ公式を与えることや,商品価値の数値計算手法への応用が期待されている. 今年度は住宅ローンにおけるリスク過程と保険会社の倒産を表す到達時間の分布およびその初期値に対する挙動を明らかにし,論文として発表を行った.住宅ローン会社は当初に融資を行う.住宅ローン会社は融資額を債務者から回収することを目指して保険料を算出する.今回提案したモデルの特徴は債務者がローン返済中に担保となる住居を損失した場合,債務返済が困難になることを考慮し,損害を受けた場合はローン返済が免除となる保険を付けたことである.この保険により,時間経過とともに返済が免除となった被保険者が増え,保険料回収比率が緩やかになる.損害の発生間隔と損害の大きさを表す確率過程が与えられたとき,総返済額が満期期日までに回収できる確率と保険料についての関係式を導出した.また,返済期間についての回収確率の減少スピードを表す評価を明示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バリアーオプションのヘッジ式における対称化法について,一般化確率過程のCarr-Nadtochiy 変換を得るため周辺の研究について調査を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
確率過程のCarr-Nadtochiy 変換を多次元に一般化するため,離散時間確率過程によるCarr-Nadtochiy 変換を明らかにした.この離散時間過程によって、連続時間過程を近似することによりCarr-Nadtochiy 変換の一般化を目指す.近似の収束問題について,まずは一般化拡散過程におけるCarr-Nadtochiy 変換を導くことが重要であると考え,現在この問題について取り組む.
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Causes of Carryover |
予定されていた出張や学会発表、および研究打ち合わせのための出張がオンラインによる開催に変更されたため予算の使用用途を変更した。次年度において、本年度に使用しなかった予算を用いて対面またはオンラインでの研究集会の開催を計画している。
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Research Products
(2 results)