2020 Fiscal Year Research-status Report
structure of quantum incompatibility
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20K03732
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮寺 隆之 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50339123)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子論基礎 / 量子測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は本研究の中心的課題である同時操作不可能性の構造について、2つの異なる側面から迫る研究を行った。一つは、量子的な参照系(quantum reference frame)の問題について、不確定性関係を含んだ同時操作不可能性の視点から限界を求めるというものである。量子的な参照系が与えられたときに、どのような操作がどこまで可能かという問題については、これまでは物理量を扱った場合のみが扱われていた(Approximating relational observables by absolute quantities: a quantum accuracy-size trade-off, P Busch, LD Loveridge, T Miyadera - Journal of Physics A: Mathematical and Theoretical, 2016)。令和2年度には、この研究を量子チャネルへと拡張することに成功した(A quantum reference frame size-accuracy trade-off for quantum channels, T Miyadera, L Loveridge - Journal of Physics: Conference Series, 2020)。また、同時操作不可能性の定義に関わる問題として、この定義が全ての状態についての不可能性として規定されており、その実験的検証は一見すると不可能であることがあった。この根本的問題に対して考察を行い、同時操作不可能性を検証するのに必要な状態の個数をあらわす量について定式化を行い、新しい指標(同時操作不可能性次元・同時操作可能性次元)を導入した。本指標は、これまでの同時操作不可能性に関する他の指標とは異なり、自然数を値にとり、さらに単純なnoisyな量子ビットに関する二値の物理量についても、そのnoiseに応じて異なる値を取ることがわかってきている。本研究は、令和3年度の初旬に公開予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、SARS-CoV2(covid-19)の世界的流行により、予定していた共同研究のための海外渡航および海外研究員の招聘ができなかった。また、多くの参加を予定していた国際会議も延期され、そこでの情報収集も不可能となった。さらに、大学・大学院においても急遽オンライン講義を行うことになり、パワーポイント資料の準備に多大な時間を費やすことになった。この遅れは、研究上で本質的な困難にあたったことによるものではないため、令和2年度に蓄積した授業資料の活用などにより、今後取り戻せることを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、複数のテーマが進行中である。一つは令和2年度より継続中の同時操作不可能性次元・同時操作可能性次元に関する研究は一定の結果が得られ、現在論文を執筆中である。まずはこの研究を早急に仕上げることを予定している。本研究は、フィンランドの研究者と私の研究室の大学院生との共同研究である。 また、二つ目として、一般確率論におけるプログラミング不可能性定理に関する研究を行っている。本研究も、大学院生と共同研究中であり、既に主定理の証明は済んでおり、さらに詳しく対象を調べている段階である。ここでは、これまでの研究における多角形理論についての経験と知見が大いに役に立つだろうと考えている。大学院生と定期的に議論を行うことで本研究は推進している。 さらに、三つ目として、Wigner-Araki-Yanaseの定理の一種の拡張に関する研究を行っている。ここでは、既存のrepeatabilityに関する条件を他の条件へと置き換えることができるかどうかについて調べている。Lindbladによるチャネルの不動点集合を用いたテクニックが活用できることが、徐々にわかってきており、まだ混乱した状況ではあるが論文出版に足る結果が得られるものと考えている。本研究は、ベルギーとノルウェーの研究者との共同研究であり、定期的にZoomを用いた議論を通じて、問題点の洗い出しと現状の確認を行っている。 この他にも、同時操作不可能性に関する種々の問題についてアイデアをざっくばらんに出し合いながら議論を行うSlackによる情報交換をイタリアの研究者と行っている。
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Causes of Carryover |
SARS-CoV-2(Covid-19)の世界的流行のため予定していた共同研究のための海外渡航と海外からの研究員招へいができず、また、参加を予定していた国際会議も延期となったため、旅費の使用ができなかったため。また、急なオンライン講義の準備に時間を多く割かざるを得なかったために、資料収集のための書籍やPCの購入などに手が回らなかったため。
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Research Products
(3 results)