2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on nonlinear problems arising in mathematical finance
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20K03737
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石村 直之 中央大学, 商学部, 教授 (80212934)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コピュラ / リスク指標 / Value at Risk |
Outline of Annual Research Achievements |
数理ファイナンスにおける非線形問題として,今年度は主に代表的なリスク指標であるValue at Risk (VaR)の多変数化について考察した。VaRはそもそもは一変数のリスク変数に対して定義されるが,多変数に拡張する場合にはリスク変数間の関係が問題となる。リスク変数間の関係は,独立性の仮定をおくことが通常であるが,それは実際の現象と合わない場合も多い。この研究では,リスク変数間には積極的に非線形な関係を想定し,コピュラ関数を用いて非線形な関係を表すことを試みた。コピュラ関数は接合関数とも呼ばれ,リスク変数間の非線形関係を表す関数として扱いやすい性質をもっているため,リスク間の非線形性を調べる主要な手法としてよく用いられている。 今年度の主要な成果としては,コピュラに基づいた多変数リスク量に対する新たなリスク指標の copula-based conditional Value at Risk (CCVaR)を導入し,解析的な性質を調べ,さらに現実のデータを用いて実証的に指標の有効性を確認したことが挙げられる。独立性を仮定した場合と,非線形なコピュラ関数で記述される場合との,それぞれの結果の比較を行い,解析的な結論と数値的な結論が一致すること立証した。特にコピュラによって,独立性の場合より大きい値を出すものと小さい値を出すものとがあることを例示した。これらの成果は,コロンビアからの日本国政府国費留学生Andres Mauricio Molina Barreto氏との共同研究に基づくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際会議での対面で参加しての成果発表や情報収集のみならず,国内での直接の研究打ち合わせも,新型感染症の影響によって当初予定の大半が行われなかったが,研究そのものは,コピュラ関数を用いての計算が成功したこともありおおむね順調に進展したと判断できる。論文は改定稿の段階であり,査読付き雑誌に公表する方向で進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で新型感染症の影響がいつまで顕著であるかは予測できないが,可能ならば関連する国際会議に対面で参加し,直接の示唆や批判を得て研究成果の内容を高めていく。国内の研究者との直接の打ち合わせも,可能な限り模索する。またコピュラに関連する新たな問題の発掘に努める。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際会議に参加し成果発表を行うことや,国内研究者との研究打ち合わせが,新型感染症流行のためおおむね実現できなかったため。今年度後半には,可能ならば国際会議に対面で直接参加し成果発表と研究情報の収集を行う。もし無理な場合は,遠隔作業が可能な備品を充実させる。
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