2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on nonlinear problems arising in mathematical finance
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20K03737
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石村 直之 中央大学, 商学部, 教授 (80212934)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コピュラ(接合関数) / リスク指標 / Value at Risk |
Outline of Annual Research Achievements |
多変数ポートフォリオ問題に対するValue at Risk (VaR)の考察を,前年度に引き続き行った。周知のようにVaRは代表的なリスク指標であり,数理ファイナンスにおける非線形問題として重要である。その意味は,VaRのポートフォリオ問題では,リスク変数間の非線形な関係が対象となるからである。リスク変数間の関係では,独立性の仮定をおくことが通常であるが,それは実際の現象をうまく記述しない場合も多い。この研究では,リスク変数間に,非線形な関係,特にコピュラ関数を用いて表される非線形な関係を想定する。コピュラ関数は接合関数とも呼ばれ,リスク間の非線形性を調べる主要な手法としてよく知られている。実際にも,リスク変数間の非線形関係を表す関数として扱いやすい性質をもっており,様々な解析が可能である。 今年度の主要な成果としては,コピュラに基づいたVaR,すなわちcopula-based Value at Riskの決定公式を証明し,さらにその有効性を,実際のデータを用いて数値的に実証研究を行ったことが挙げられる。定義は明確なVaRであるが,その実際の計算は面倒であり,コピュラ密度を用いる公式が知られているのみであった。今年度の成果では,コピュラ密度を用いずにVaRの計算が可能な公式を導いた。以前のアルキメデス型での成果を拡張し,すべてのコピュラに対して成立する公式となった。この成果は,コロンビアからの日本国政府国費留学生として博士学位を取得したAndres Mauricio Molina Barreto氏,および高岡浩一郎教授との共同研究に基づくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際会議への対面での出席は,新型感染症の影響により,実行できない状態が続いているが,遠隔での開催はむしろ順調であり,2022年1月のICAPMでは基調講演および座長を遠隔において務めた。国内での研究集会は対面+遠隔混合のものも増えてきており,そのいくつかに参加し,研究成果の発表や有意義な議論を行うことができた。特に,2021年10月の立命館大学における研究集会では,今年度の成果を発表し,次に進むべき方向性について議論した。また,破産確率の数値計算という新たな研究課題の進展もあり,総じて順調に推移していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きコピュラ関数をともなう数理ファイナンスの非線形問題に取り組む。複合Poisson過程において,独立ではなくコピュラで記述される場合の理論解析に取り掛かる。また,数理ファイナンスにおける偏微分方程式の一つの例として,破産確率がみたす偏微分方程式が知られているが,それはVolterra型積分方程式と同値であり,その数値計算手法について新しいスキームを考察する。後者の課題は,同志社大学今井仁司教授との共同研究による。 新型感染症の問題は引き続き影響が大きいが,地道な研究は滞りなく進める。
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Causes of Carryover |
新型感染症流行による影響のため,当初予定していた国際会議に参加し成果発表を行うことや,国内研究者との研究打ち合わせが,おおむね実現できなかった。今年度には,是非とも国際会議に対面で直接参加し成果発表と研究情報の収集を行う。もし無理な場合は,国内研究集会へ参加し成果発表や研究打ち合わせを行い,さらには遠隔作業が可能な備品を充実させる。
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