2021 Fiscal Year Research-status Report
ランダムネスを用いた非線型偏微分方程式の陰的数値解法の開発と数学モデルへの展開
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20K03738
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
畑上 到 東京都市大学, 共通教育部, 教授 (50218476)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 陰的スキーム / 反応拡散系 / グレイースコット方程式 / フィッツーフー-南雲方程式 / ランダムネス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究成果としてまず,2020年度の成果として得られた比較的大きいランダムネス付加による時空カオスの出現を抑制し,幻影解の出現を促進させる効果についてフーリエ解析により深く検討した結果,自己複製と自己崩壊のパターンダイナミックス過程において,ランダムネスの長波長成分を抑える効果が顕著であることが明らかとなった.このように,パターンダイナミックスのサイクルのある部分にランダムネスが寄与するという知見は重要であると考えられるので,今後は別のサイクルについても考察していくことを計画している. 次に時空カオスの出現において非常に大きなランダムネスの付加が初期条件の依存性を見かけ上消す効果があることについてであるが,今年度いろいろな角度からアプローチした結果,極度に大きいランダムネスの付加により,パターンダイナミックスサイクルを外れた別パターンへの遷移であることが明らかになった.一方今年度研究対象をフィッツーフー-南雲方程式をまで拡大して考察を行った結果,この遷移過程におけるランダムネスの大きさの影響は,明らかにある種の連続系に見られるような物理パラメータに類似したものであり,パラメータの変化により分岐が生じることが明らかとなった.これは陰的解法の各ステップで達成される自己撞着場であるパターンが安定化し,そのランダムネスと離散パラメータである時間刻みの大きさによる安定性との間で決定される固有のパターンが生成しているのではないかと推測される.この研究についてはまだ不明な点も多く,今年度はリモートにより確率論の研究者と討論を行ってきたが,来年度以降は対面での討論も含めてより明確にしていきたいと考えている. 以上の研究成果については,日本応用数理学会の環瀬戸内応用数理研究部会第25回シンポジウムにおいて口頭発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度においては,2020年度に導入したサーバーと動画作成ソフトを利用して自己複製と自己崩壊のパターンダイナミックスサイクルのどの部分にランダムネスが寄与しているかについて焦点をあてて研究を行った. また数式処理ソフトも利用し,新たに解析用のノートパソコンを導入し,フーリエ解析等の別アプローチも行ってこの点について解析した.その結果,ランダムネス付加がパターンダイナミックスサイクルの一部分への寄与し,またサイクルから別サイクルへの遷移に影響していることが示された.さらにこの遷移過程におけるパラメータであるランダムネスの影響,固有状態の性質等を,別の擬似乱数を生成させて検証する上で新たなコンパイラ環境を導入して解析した.また別の対象モデルにおいても同様の現象が生じるかについても解析した.その結果,達成される自己撞着場としての固有状態は擬似乱数の性質や対象モデルに関係なく見られる状況であり,これは解の信頼性と数値計算の安定性を向上させていく上での重要な情報を与えられると考えられる.従って研究を遂行していく方向性として問題ないと判断でき,今年度の研究成果としてはある程度達成できているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
大きいランダムネス付加が陰的解法の各ステップで達成される自己撞着場であるパターンが安定化し,そのランダムネスと離散パラメータである時間刻みの大きさによる安定性との間で決定される固有のパターンが生成しているのではないかと推測される点についてはまだ不明な点も多い.またこの固有状態がパターンダイナミックスの遷移と関係している点についてもまだ不明な点が多い.今後はこの点についての解析を進めるとともに,確率論や陰解法の安定性を研究している数値解析の研究者と対面での討論も含めて精力的に討論し,明確にしていきたいと考えている.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大による,国内及び国外への旅費がほとんど利用できなかったため,次年度以降に繰り越している.感染拡大の状況もかなり改善されてきたので,対面で行われる研究集会や学会発表への参加とともに,確率論,数値解析の研究者との対面での個別の討論を状況を見ながら執行していく予定である.
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Research Products
(1 results)