2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03739
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小川 知之 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80211811)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 振動場反応拡散系 / パターン制御 / 分岐構造解析 / 進行波振動 / メトリックグラフ |
Outline of Annual Research Achievements |
反応拡散方程式系のパターン形成は散逸を伴う様々な非線形現象に関連して盛んに研究されてきた。しかし定常でなく振動的なパターンの場合は,大域的な振る舞いは極めて複雑で普遍的な理解に至っていない。一方,例えばある種の細胞などでは,あたかも膜上に現れる特定のタンパク質濃度の振動パターンを自在に制御しながら活動しているようにも見える。また振動化学反応でも,一見不規則に生起する振動パターンに光によるフィードバック制御を行うと,統率された定在波振動が観測されたりすることも知られている。つまり拡散振動場は多様・豊富なアウトプットを内在しており,生物などはそれを利用して低コストで制御していると考えられる。振動場反応拡散系を自律的にフィードバック制御することによりどの程度その挙動を律することができるか,所望するような振動パターンが得られるかという問題は,拡散現象の研究の裾野を拡げることに繋がると期待される。このような背景の元,本研究課題に先立つ研究課題では,2つの拡散結合振動子系に大域的なフィードバック制御を加えることで同相振動や交互振動を安定に出現させられること,さらに拡散係数を変えることで交互振動の分岐ブランチ(枝)の組み替えが生じることを明らかにした。かくして分岐構造のトポロジーの変化を利用し低コストで大変形の制御を可能にする,すなわち,分岐構造的特性を利用して系の挙動をコントロールする「アクティブなパターン制御」という新たな視点を導入した。大域結合された大規模振動子集団における特徴的な振る舞いの解析を行なった。これらは,神経生理学などに現れるキメラ振動とも関連することから既存の研究をサーベイしながら分岐構造を追跡し,周期的進行波振動の安定性と照合した。またメトリックグラフ上の反応拡散系に現れる周期パターンの分岐解析も行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
BZ反応の大域フィードバック制御系に関して,FHN系の結合振動子系モデルの挙動として同相振動,3相振動,2:1交互振動などの特徴的な解が現れることを確認した。同相同期と交互同期の2つの分岐枝がお互いに繋ぎ変えを起こすリコネクションが拡散とフィードバックの競合により現れる。このリコネクションによって,同相振動と交互振動の双安定な領域がパラメータに依存して変化する事が確認された。さらに,FHN系の大規模な結合振動子系で,同期振動,クラスター振動,進行波振動,キメラ振動などの挙動を確認し,パラメーター空間の中で分類を行なった。特に同調領域と非同調領域が共存するキメラ振動が進行波振動の安定性の変化に伴って現れることを明らかにした。また端点のないコンパクトメトリックグラフ上の反応拡散系に周期波の分岐解析を行いその数値的な追跡も行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
次のような課題を検討していく。(1)FHN系の大規模な結合振動子系に対しては,進行波振動解の安定性解析をさらに進めてキメラ振動の分岐的起源を明確にする。大域結合パラメーターによる分岐枝の解析により「アクティブなパターン制御」を試みる。(2)端点のないコンパクトメトリックグラフ上の反応拡散系で周期波の分岐解析をさらに進めてここでもリコネクションなどを利用して制御可能かどうかを検討する。これらの研究成果を2023年度に登録したAIMS国際会議などで研究発表し,今後の方向性を再検討する。
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Causes of Carryover |
3年間の間,国際会議での研究発表や,沖縄科学技術大学院大学,ペンシルバニア大学の研究グループとの集中した打ち合わせが,感染拡大に伴う活動制限により実施することが難しかった。そのためオンラインミーティングで可能な部分のみで研究計画を進めてきたが,2023年1月に日仏韓台湾共同研究プロジェクトの国際会議でようやく一部の検討ができた。次年度に繰り越すことで2023年6月にAIMS国際会議での研究発表や9月にペンシルバニア大学の研究グループとの研究討議を予定している。
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