2020 Fiscal Year Research-status Report
Search for novel non-equilibrium phase transitions dominated by topological defects
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20K03765
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
小林 未知数 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (50433313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | トポロジカル欠陥 / 量子渦 / 量子乱流 / 分数量子渦 / 渦分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、様々な系において普遍的に現れ、長い寿命を持つ高エネルギー状態であるトポロジカル欠陥に着目し、その新奇な物理現象を探索することである。令和2年度ではトポロジカル欠陥である量子渦によって構成される量子乱流に着目し、その大規模数値シミュレーションを行うための有効な計算手法の開発を行った。量子乱流を扱う数値模型の1つとして非線形シュレディンガー方程式がよく知られているが、量子乱流のように量子渦が大量に存在する系を扱うための効率の良いアルゴリズムはあまり知られていない。私はそもそも量子乱流を効率よく生成する手法の開発から初め、時間発展を高速・高効率・高精度で解く手法の開発に成功した。特に新しく開発された手法では、量子乱流のシミューレーションでは困難とされていた運動量の保存を高精度で確保し、それを並列化によって高速に実行することに成功した。この手法により、エネルギー、粒子数、運動量といった力学系で保存すべき3つの基本要素全てを満たすシミュレーションが可能となる。 当年度ではもう1つ新たな研究テーマとして、変形ゴールドストーン模型の提唱、研究を行った。トポロジカル欠陥の1つである量子渦が存在するためには、ある種の連続対称性の自発的破れが必要となる。もっとも単純なU(1)対称性の破れおよび整数量子渦の出現を引き起こすゴールドストーン模型から出発し、その模型を変形することによって、U(1)対称性が一気に破れるのではなく、段階的に破れるような模型を開発した。この模型には整数量子渦だけでなく、分数のチャージを持つような分数量子渦が出現し、その分数量子渦が結合することによって1つの整数チヤー地を持つ量子渦となる、いわゆる渦分子を可能とする。今後、分数量子渦を1つの素粒子だとみなすことによって、ハドロンのような複合素粒子との対応を議論することが可能となるような、模型の発展が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の達成目標であった量子乱流における層流・乱流転移の発見には至っていないが、シミュレーションを行う準備が完了した。また、変形ゴールドストーン模型の研究は令和3年度の達成目標である、量子渦分子の閉じ込め・非閉じ込め転移を研究するための数理模型であり、模型の準備が整ったと言える。 まとめると令和2年度には令和2年度と3年度の達成目標のおよそ半分ずつが達成されており、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで準備してきた大規模数値シミュレーションを実際に実行することによって元々の令和2年度の達成目標である量子乱流の層流・乱流転移の研究および、量子渦の閉じ込め・非閉じ込め転移の研究を完成させる。それと同時に令和4年度の研究目標である熱流下における2相共存状態の研究の準備に入る予定である。
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Research Products
(4 results)