2022 Fiscal Year Research-status Report
Search for novel non-equilibrium phase transitions dominated by topological defects
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20K03765
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
小林 未知数 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (50433313)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子渦 / 中性子星 / p波超流動 / 量子渦分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、様々な系において普遍的に現れ、長い寿命を持つ高エネルギー状態であるトポロジカル欠陥に着目し、その新奇な物理現象を探索することである。令和4年度では、令和3年度に引き続き、太陽程度かそれ以上の質量を持ち、半径が数10キロメートルほどの天体である中性子星に着目し、中性子星の回転によって生成するであろう量子渦の詳細な構造について調べた。 中性子星内部では非常に高密度な中性子の流体が複雑な内部自由度を持つ超流動状態となっており、その内部自由度を反映して、新奇な内部自由度を持つトポロジカル欠陥の存在が期待される。また、中性子星の不規則な回転が原因とされるパルサーグリッジと呼ばれる観測事実は、この中性子星内部のトポジカル欠陥の複雑な非平衡現象によるものであると理論的に期待されているが、その詳細は未だ未解明であり、中性子星内部のトポロジカル欠陥の詳細な理論的解析が望まれている。本研究では中性子星内部で実現されるいくつかの中性子超流動のうち、比較的深部で実現されると予想されている3重項p波超流動における量子渦の内部構造について、中性子星の温度および中性子星内部の磁場に対する依存性を詳細に調べた。p波超流動中に存在する量子渦について、渦芯から十分離れたところの構造はp波超流動の対称性のみで決まるが、渦芯近傍の構造は対称性だけからは決まらず、温度や磁場など様々な要因によって複雑に変化する。本研究では中性子星内部のp波超流動における整数量子渦が、中性子星で実現されていると思われるほぼすべての温度、磁場の領域において、p波超流動の対称性に関わらず、渦芯近傍において2つの半整数量子渦に分裂し、半整数量子渦分子となっていることを明らかにした。この結果は、多数の量子渦が存在する環境において、普通の整数量子渦には見られない現象が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子星超流動は令和4年度の達成目標であった量子渦分子の閉じ込め・非閉じ込め転移が期待される非常に重要な系の一つであり、この系の量子渦の構造がほぼ全て明らかになった。また、多数の量子渦が存在する場合の計算もほぼ全て終わっており、したがって研究はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子星超流動の系を具体的な舞台として、多数の量子渦が存在する場合の平衡および非平衡状態のシミュレーションを行う。また熱流下における2相共存状態の大規模シミュレーションを行い、局所熱平衡仮定の破れに関する考察を行う。
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Research Products
(6 results)