2020 Fiscal Year Research-status Report
回路量子電磁力学における人工原子・光子間相互作用の深強結合領域に対する数理的研究
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20K03768
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
廣川 真男 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (70282788)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シュレディンガーの猫風状態 / 仮想粒子 / 実粒子 / 光子 / 回路量子電磁力学 / 一般化されたラビ模型 / 深強結合領域 / 2次の相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
2準位原子と1モード光の相互作用を記述する一般化された量子ラビ模型に対し,回路量子電磁力学の実験で実現されているかなり強い深強結合領域と呼ばれる原子・光子間の相互作用を考慮し,2次の相互作用を導入し,この2次の相互作用に起因する仮想粒子から実粒子への転化の可能性を調べた。 転化を調べるため,初期の原子核理論で用いられたメゾン・ペア理論と呼ばれる場の量子論的手法を援用し,2準位原子と中性スカラー場の相互作用に1次と2次の相互作用を持つラグランジアンをたて,そこから場の方程式を導出し,粒子の素過程の中で2次の相互作用が非断熱的に消え,1次の相互作用のみが断熱的に作用するる数学的設定を採用した。この場の方程式が記述する物理系のハミルトニアンに対し,有限体積近似,双極子近似,共振器内の1モード近似を施すことで,メゾン・ペア理論を一般化された量子ラビ模型に適用する手法の研究が今年度の研究内容となった。 本研究では,深強結合領域において2次の相互作用が加わった一般化された量子ラビ模型の各束縛状態では,実粒子としてのドレスト光子のシュレディンガーの猫風状態が主要項となることが(数学の言葉では)ノルム・レゾルベント収束を示すことで証明された。このノルム・レゾルベント収束が物理でい言う所の断熱近似の数学的証明を与えることを示した。また,この結果の応用として,2次の相互作用を起因とする,仮想粒子としての光子が実粒子に転化できる光子数の見積りなどを計算する手法とそれらの近似値を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目標に掲げた半分は解決され,その研究結果は既に論文として出版されたため。しかし,この手法は初期の原子核理論のメゾン・ペア理論の援用であるので,この手法が実験物理学的に正しいのか等,幾つか物理学的に検討しなければならない課題が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,2次の相互作用を非断熱的に切り,1次の相互作用を断熱的に作用させる粒子の素過程を想定し,初期の原子核理論のメゾン・ペア理論の援用したので,1次の相互作用も非断熱的に切った場合を調べる。そのためには,基本に戻り,場の方程式から漸近場をも問えること等の問題を解決することが今後の研究方針である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスに対応した緊急事態宣言などのため,予定していた海外出張は出来ず,また,予定していた国内出張もかなり制限されたため。次年度は,新型コロナウイルスの感染状況を見ながら,実施できなかった研究打合せを入れて行く。
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Research Products
(1 results)