2020 Fiscal Year Research-status Report
Improvement of tensor network renormalization group and high accuracy analysis of phase transitions and critical phenomena
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20K03780
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 悟史 東京大学, 物性研究所, 助教 (20586903)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 統計力学 / 計算物理学 / テンソルネットワーク / くりこみ群 / 角転送行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,(1) 角転送行列を利用したテンソルくりこみ群の高精度化,(2) 複数の引力相互作用が存在する古典ダイマー模型の研究,(3) 1次元量子スピン梯子模型における研究を行った. (1)に関しては,より短い計算時間で既存手法の計算精度を達成することが可能なテンソルくりこみ群手法の提案を行った.テンソルくりこみ群における情報圧縮は,局所的情報のみを用いる方法と系全体の情報を用いる方法の2種類がある.後者として,無限系の情報を環境テンソルで近似することで擬似的な大域的な最適化を行う手法が知られている.この方法は,非常に高精度ではあるが,環境テンソルの計算に粗視化と微視化を繰り返す必要があり計算コストが高いという問題点があった.そこで,我々は,環境テンソルを角転送行列で置き換える手法を提案した.角転送行列くりこみ群により角転送行列を求めることができるため,スケール変換を行うことなく環境の情報を取り込むことが可能となった.さらに,ボトルネックとなっていたテンソルネットワークの縮約にも大域的最適化を応用した近似を導入し,計算精度を犠牲にすることなく計算量オーダーの削減に成功した. (2)に関しては,行列積状態を用いた数値計算を行い相図の構造を特定した.特に,通常のコラムナー秩序相の他に,並進対称を破らずに配向秩序をもつネマティック状態が安定化する領域が存在することが明らかになった.(3)に関しては,異方性および4体相互作用が存在する1次元量子スピン梯子における臨界現象の研究を行った.スピン回転対称性が破れた磁気秩序相から並進対称性が破れたダイマー秩序相への連続転移が起こることを見出し,場の理論による解析計算と行列積状態による数値計算により,この相転移がガウシアン普遍性クラスに属することを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的の一つであるテンソルネットワークくりこみ群の改良として,テンソルくりこみ群における大域的最適化の計算コストを削減する新手法を提案することができた.角転送行列に基づいたこの手法は,高次元系におけるテンソルくりこみ群へも応用が見込まれる.また,1次元量子系の研究を通して行列積状態に関する知見を蓄積した.特にカノニカルフォームを用いた一連のアルゴリズムは,今後取り組む高次元テンソルくりこみ群の新手法開発に役立つことが期待される.ダイマー模型に関する国際共同研究については,計算手法の開発が進み当初予定よりも順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,高次元でも効率的なテンソルネットワークくりこみ群の開発を継続して行う.特に,行列積状態におけるカノニカルフォームを用いた一連の手法や有限サイズの行列積状態における最適化アルゴリズムの応用について検討する.ダイマー模型に関してはより詳細な計算を行い,各相転移の普遍性クラスを明らかにする.また,量子スピン梯子模型の発展的課題として,対称性によって保護されたトポロジカル相が現れる領域について調べ,その特性を明らかにする.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により出張計画に変更が生じた.オンラインでの研究発表に利用できるタブレット型端末の購入を検討している.
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Research Products
(9 results)