2021 Fiscal Year Research-status Report
Nonadiabatic effects in periodically driven nonequilibrium systems
Project/Area Number |
20K03781
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 和孝 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (70415214)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 量子熱機関 / Lee-Yangゼロ / 量子速度限界 / 断熱ショートカット / 量子アニーリング |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)少数準位をもつ量子系を熱機関として動作させたときの効率やパワーとそのゆらぎなどを解析した。解析解を用いて量子効果や非断熱性が結果にどのような役割を果たすかを詳細に調べた。量子効果による熱の流れは古典系のものとは全く異なるメカニズムで生じるが、それでも全体としては熱力学のCarnotの定理にしたがう。効率やパワーは、熱浴との結合に強く依存して複雑に変化する。 (2)古典確率過程において定義される完全計数統計の生成関数について、Lee-Yangゼロの分布を調べた。離散時間系ではゼロ点は連続的に分布するが、連続極限をとるといくつかの点に集積するようになる。周期駆動系の特徴をゼロ点を用いて記述できることがわかった。 (3)量子速度限界について新しい不等式を導いた。孤立量子系の状態間の距離について、上限のみならず下限も導くことができる。従来の不等式よりも制限は強くなる。周期系についても有用な結果を得ることができる。 (4)量子開放系について、断熱ショートカットに基づいて断熱状態を制御する手法を提案した。孤立系では厳密に行うことができるが、開放系の場合には、ハミルトニアン、散逸項、制御項それぞれのスケールが制御性能を決定する。 (5)量子アニーリングに基づいた状態遷移について、分岐を用いたアルゴリズムを提案した。二つの物理スピンを一つの論理スピンとして扱うことによってエラー耐性をもつようになる。研究開始前に得られていたアイデアについて数値計算をくわしく行い、通常の量子アニーリングと同等かわずかによい性能が得られることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は論文5編の投稿を行った。それらのうち3編は出版済みである。当初想定していた量子熱機関や古典確率過程など周期操作する開放系の問題について、さまざまな視点から研究を行うことができた。そのため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は現時点では、次の研究を計画している。 (1) ヒートポンプ系の最適制御。温度差を用いる代わりに量子的に系を駆動することによってヒートポンプの成績係数を大きくすることができる可能性をくわしく調べる。国内の研究者との連携を行っている。 (2) 古典確率過程の応用例として、古典計算過程のアニーリングを用いた効率化を行う。ブラウン型計算機を想定して、確率過程を用いた計算についての性能を解析する。プロトコルの適切な調整により、計算時間や発熱量の特性を調べる。国内の研究者との連携を計画している。 (3) 量子速度限界不等式の開放系・多体系への拡張。前年度に導いた不等式をより広い系に適用できるように拡張する。今年度後半に海外の研究者を訪問し、議論を行うことを計画している。
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Causes of Carryover |
出張が制限されていたため、旅費として用いることができなかった。 次年度において論文掲載費やセミナー謝礼金、必要機材などに用いる。
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Research Products
(3 results)