2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of Exact First-Principles GW+Bethe-Salpeter Method
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20K03784
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
野口 良史 静岡大学, 工学部, 准教授 (60450293)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 第一原理 / GW近似 / Bethe-Salpeter方程式 / 励起子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、Bethe-Salpeter方程式をGW近似の範囲で解くいわゆる第一原理GW+Bethe-Salpeter法の手法開発およびプログラム開発を行うものである。既存のGW+Bethe-Salpeter法ではGW近似の枠組みの中で、さらなる近似を用いている。GW近似による一電子自己エネルギー演算子を一粒子グリーン関数で汎関数微分することで定義される電子-ホール相互作用核には、一つの直接項と3つの(1つは1次、残り2つは2次の)交換項が現れるが、既存の手法は2つの2次の交換項を無視してしまっている。つまり既存の手法は2つの2次の交換項が無視できるほど小さい寄与しか持たないという仮定のもとで計算されている。しかし実際にこれらの項が評価された例は無く、あくまでも仮説の域を出ない。 近年の計算機能力の発達により、既存のGW+Bethe-Salpeter法はその適応範囲を広げている。多くの適応例が報告され情報が蓄積されていく中で、その適応限界も議論されるようになった。GW近似を超えるさらなる高精度計算手法の登場が強く待ち望まれている。このような状況の中、これまで無視されてきた2つの2次の交換項を世界で初めて評価し、「厳密」にGW近似の範囲でBethe-Salpeter方程式を第一原理から解法できるようになることは、beyond GWを目指す上で避けては通れない重要な課題である。 研究実施計画に則り、本年度は2つの2次の交換項を含めた計算をThiel's setという量子化学計算でよく用いられる28個の分子を含んだベンチマークセットに対して行った。既存の手法と比較を行い、2次の交換項の効果を明らかにした。これらの結果は現在論文執筆中であり近日中に雑誌に投稿する予定である。また今後国内外の学会で発表をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に則り、既存のGW+Bethe-Salpeter法では完全に無視されてきた電子-ホール相互作用核に現れる高次の項である2次の交換項を定式化した。またそれを我々が独自に開発を進めている全電子混合基底法プログラムへ実装をした。そのプログラムを用いて実際に、追加近似なしの「厳密」な第一原理GW+Bethe-Salpeter計算を28個のベンチマークセット分子(Thiel's set)に対して行った。本年度行った計算はすべて、通常の密度汎関数理論(DFT)を出発点として、そこで得られた軌道エネルギーや波動関数を用いてグリーン関数を構築し、一度だけDyson方程式を解くといういわゆるone-shot GW法を採用して行った。既存の手法と比較を行い2次の交換項の効果を明らかにした。また2次の交換項の特性を明らかにするために、励起子波動関数を用いた励起子解析法を行った。2つの2次の交換項はそれぞれ符号が逆でありお互いに打ち消し合うために、結果としてそれほど大きな寄与を持たないことが明らかとなった。しかし、n-->π*遷移などのように酸素や窒素などに局在した軌道からの励起状態では光学ギャップを0.2 eV程度大きくするという比較的大きな寄与を持つこともわかった。一方で、分子構造が完全に平面な分子(BenzeneやNaphthaleneなど)のπ-->π*励起では2次の交換項は光学ギャップを小さくする効果があることも明らかになった。 以上の結果に加え、詳細な励起子解析の結果などを含め現在論文を執筆中である。またこれらの結果は今後国内外の学会でも発表をする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】でも述べたように、本年度は2つの2次の交換項の定式化を行いそれを我々が独自に開発をしている全電子混合基底法プログラムへ実装をした。完成したプログラムを用いて実際に28個の分子に対して光学ギャップを計算し、2次の交換項の影響を調査した。それらの結果は現在論文にまとめているところであり近く雑誌に投稿予定である。また国内外の学会でも発表をする予定である。 今後はこれまで行ってきた計算をさらに発展をさせ、「厳密」なGW+Bethe-Salpeter法の確立を目指す予定である。本年度行った計算はone-shot GWという、密度汎関数理論を出発点として、そこで得られた軌道エネルギーや波動関数を用いて一粒子グリーン関数を構築することにより、一回だけGW近似の範囲でDyson方程式を解くという手法を採用してきた。しかしBeym-Kadanoffの保存則を満たすためには、one-shot GWではなくself-consistent GWを行う必要があることは明らかである。そこで今後はself-consistent GW法のプログラムを完成させる予定である。すでにプログラム開発には取り組んでおり、プログラムの大部分は完成している。今後はテスト計算を繰り返し行い、プログラムの完成度を上げていく予定である。これらの作業には半年から1年程度を要すると見込んでいる。プログラムが完成次第、本年度計算をした28個の分子に対してself-consistent GW法を適応して計算を行う予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き、本年度もコロナ禍の影響により参加予定だった国内外の学会の多くが中止(あるいは延期)となり、またいくつかの学会ではオンライン開催となった。そのため当初予算を計上していた旅費を使用する機会がまったくなかったために、次年度使用額が生じた。また本年度は計算機を購入予定であったが、期待していた性能を有する計算機の発売が延期となったために、購入を次年度以降に延期したことも影響している。 次年度も学会開催の有無や形式は未だ不透明であるが、現時点では参加予定のいくつかの国内学会では現地開催予定となっている。そのため次年度以降は当初計画通り旅費が発生するものと考えている。加えて、次年度使用額に加えて次年度交付される金額を加えて、次年度には計算機を2台購入する予定である。
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