2021 Fiscal Year Research-status Report
Bulk-edge correspondence and its application in non-Hermitian topological phases
Project/Area Number |
20K03788
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井村 健一郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(先), 研究員 (90391870)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 非エルミート系 / バルクエッジ対応 / 多体局在 / 量子エンタングルメント |
Outline of Annual Research Achievements |
バルクエッジ対応はトポロジカル物質の研究において基本的な考え方である。周期境界条件下で計算可能なバルクのトポロジカル数と開境界条件におけるエッジ状態の有無が1対1に対応する。典型的な非エルミート系である非対称ホッピング模型の場合、開境界条件下ではエッジ状態の出現・消失に加えて、表皮効果が起こる。すなわち、系のバルクの性質が境界条件によって変化する。このため、エルミート系にバルクエッジ対応を非エルミート系にそのまま適用しようとすると上手くいかず、多少の変更を迫られる。具体的には、いわゆる通常の周期境界条件に、1)修正を加える(一般化する)か、あるいは、2)それを本質的に諦める2つの処方箋が存在する。我々は、1)を提唱した。 一方、非エルミート系においては、「もう一つの」バルクエッジ対応ともいうべき、新しいタイプの、非エルミート系固有のバルクエッジ対応が存在することが最近の研究で分かってきた。開境界条件下における非エルミート表皮効果の有無は、周期境界条件下における非エルミート特有の複素スペクトルに関係した新しいトポロジカル数と1対1に対応している。例えば、系に乱れを加えた場合、乱れの強さに応じて、スペクトルは複素から実へと転移するが、このスペクトルの複素-実転移は波動関数の非局在-局在転移と同時的に起こる。さらに、非対称ホッピング型(羽田野-ネルソン型)の系の場合は、非エルミート表皮効果が同じ点で消失し、それに対応してトポロジカル数も変化する4重転移となる。 このように、非エルミート系において、バルクエッジ対応はバルクとエッジの1対1対応からより多面的な対応関係へと深化する。本研究では、この深化の様子をより詳細に検証した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要欄で、バルクエッジ対応が一見破れているように見えることを述べた。この困難を解消し、バルクエッジ対応、ひいては、トポロジカル絶縁体の概念を非エルミート系にスムーズに一般化する処方箋として、次の2つが存在する:1)通常の周期境界条件に、修正を加える(一般化する)か、2)それを本質的に諦める。我々は1)の処方箋を提唱した[1]。また、非エルミート系特有の「もう一つの」バルクエッジ対応[2]に関して、系に乱れを加えた場合、乱れの強さに応じて、スペクトルは複素から実へと転移する[3]が、このスペクトルの複素-実転移は波動関数の非局在-局在転移と同時的に起こる。非対称ホッピング型(羽田野-ネルソン型)の系の場合は、非エルミート表皮効果が同じ点で消失し、それに対応してトポロジカル数も変化する4重転移となる。このように、非エルミート系においてバルクエッジ対応は元々のバルクとエッジの1対1対応からより多面的な対応関係へと深化するが、本研究では、この深化の様子をより詳細に検証した[4]。 [1] K.-I. Imura, Y. Takane, Phys. Rev. B 100, 165430 (2019); Prog. Theor. Exp. Phys. 2020, 12A103 (2020). [2] Z. Gong et al., Phys. Rev. X 8, 031079 (2018). [3] N. Hatano, D.R. Nelson, Phys. Rev. Lett., 77, 570 (1996); Phys. Rev. B, 56, 8651 (1997). [4] T. Orito and K.-I. Imura, Phys. Rev. B 105, 024303 (2022).
|
Strategy for Future Research Activity |
概要欄で、非エルミート系においては、表皮効果に関連したもう一つのバルクエッジ対応[1]があることを述べた。我々はこれまで、粒子間相互作用のない一体の問題についてこの現象の理解を深めてきたが、一方で、粒子間相互作用の無視できない多体の系については、一体問題の場合に確立されつつある解釈が必ずしも上手く機能しないと考えている[2-5]。今後の研究においては、このような非エルミート量子多体系における表皮効果とバルクエッジ対応について精査する。 ここまで、バルクエッジ対応、表皮効果といったエルミート系特有の境界条件に強く依存する物理について述べてきたが、実は、非エルミート系における波束のダイナミクスを調べると、エネルギー固有値やそれに対応する波動関数の性質が境界条件に依存して大きく変わる(e.g., 複素数→実数)にも関わらず、波束のダイナミクスはその影響を本質的に受けない[6,7]ことが最近我々が行った計算でも明らかになってきた。本年度はこのような非エルミート系における量子ダイナミクスやそれに多体効果も取り入れたエンタングルメントのダイナミクスなどについてより詳細に調べていきたい。 [1] Z. Gong et al., Phys. Rev. X 8, 031079 (2018). [2] E. Lee, et al., Phys. Rev. B 101, 121109 (2020). [3] F. Alsallom, et al., arXiv:2110.13164. [4] K. Kawabata, et al., Phys. Rev. B 105, 165137 (2022). [5] S.-B. Zhang, et al., arXiv:2201.12653. [6] L. Mao, et al., Phys. Rev. B 104, 125435 (2021). [7] N. Okuma, arXiv:2202.07684.
|
Causes of Carryover |
昨年度は、新型コロナウィルスの感染拡大のため、海外渡航や国内出張をキャンセル/断念せざるを得なかった。今年度は、研究のための出張を少しずつ平常化していきたい。
|