2020 Fiscal Year Research-status Report
Quantum-classical correspondence in adiabatic cycles
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20K03791
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 篤司 東京都立大学, 理学研究科, 助教 (20323264)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 断熱非可積分性 / アンホロノミー / 新奇な量子ホロノミー / 微小振動 / 量子古典対応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、これまで量子系で調べられてきた新奇な量子ホロノミーについて、その古典対応物を探索した。新奇な量子ホロノミーとは、定常状態にある量子系が断熱サイクルによって最初のものとは異なる定常状態に移行することである。近年、新奇な量子ホロノミーの具体例が数多く見いだされ、その数理的な背景として既存の幾何学的位相の枠組みの拡張が得られた。一方で、新奇な量子ホロノミーの多くは単純な量子古典対応を許さない。このため、以前は新奇な量子ホロノミーの古典対応物を論じることが可能か否かすら不明瞭であった。 ここでは、Kasumie, Miyamoto and Tanaka (2016) によるデルタポテンシャルを利用した量子系を取りあげた。ただし、デルタポテンシャルを利用すると単純な古典対応物を持たず回折のような量子効果の混入が避けられない。このことを考慮しつつ、類似物として古典的なバネ質点系を導入した。この系で基準モードのアンホロノミーを引き起す断熱サイクルを探し出した。線形系という特殊な古典系を利用することで、古典系のアンホロノミーを量子系でのアンホロノミーとして論じることが可能となった。また、この結果を論じるにあたり、断熱接続の概念を広く再考察した。この結果、断熱保存量が保存しつつもそのアンホロノミーが発現する機構が明らかになった。 この結果から、新奇な量子ホロノミーの新しい例がただちに得られる。これは、量子場での例を含むものであり興味深い。一方、本研究では線型な古典系を扱うことが技術的に極めて重要であった。非線形な古典系での例を示すことは重要な課題として残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で挙げていた課題の一つである、準位交差に伴う新規な量子ホロノミーに対応するような、具体的な古典系において、断熱不変量の変化を解析することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得た古典系での例についての幾何学的な意味付けを調べたい。この問題は Duistermaat の球状振子の幾何学的な解析 (Comm. Pure. Appl. Math, 1980) を応用できるのでは無いかと考えている。既知の例である周期外力下のスピン系(論文未公表)にも同様の考察を試みたい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた開発環境の更新を延期したこと、また、出張が不可能な状況となったため。
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Research Products
(3 results)