2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03792
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
松川 宏 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20192750)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 摩擦 / 地震 / 粉体 |
Outline of Annual Research Achievements |
摩擦は最も身近な物理現象の一つであり実用上も重要であるため古代から研究されてきたが、多くの基本的な問題が未解決である。本計画では、解析計算、数値シミュレーション、実験を併せて行い、現代物質科学・技術の成果をもとに新しい視点から、様々な分野における多様な系・スケールの摩擦の研究を有機的につなげ、摩擦の普遍性と多様性の機構を明かにすることを目的として研究を行ってきた。以下、具体的な研究計画に即して実績の概要を記す。 1, マクロな弾性体における前駆滑りと摩擦 基板上の弾性体ブロックなどマクロな系においては必然的に起こる系の中の非一様性が摩擦に大きな影響を与える。この問題に数値的に取り組むため、有限要素法を用いた計算機実験のプログラムを作成中である。 2, 介在物のある系の摩擦、粉体の摩擦 2つの表面間に粉体、潤滑剤などの介在物がある場合の摩擦は様々なスケールの舞台で現れ多様な振る舞いを示す。粉体の摩擦として砂と基板の間の滑り面の動摩擦を、基板が受ける形状的摩擦力の影響を排除して実験的に調べることに成功した。この系では砂の水分含有率により砂のレオロジカルな性質が大きく変わる。 摩擦力が荷重に比例するというアモントンークーロンの法則が、砂の水分含有量によらず成立することを見いだした。その比例係数として定義される摩擦係数は水分含有率に大きく依存し、適度な水分含有率では摩擦係数は30%ほども減少する。個別粒子法を用いた計算機実験によっても矛盾しない結果を得た。 3.基盤上の原子フレークのダイナミクスと超潤滑 原子スケールで清浄な界面で摩擦力がほとんど消える超潤滑と呼ばれる現象が注目を集めている。従来、この現象は同種の表面で結晶軸が一致しない場合に現れると考えられてきたが、一致する場合にも現れる可能性がある。その可能性を分子動力学法により調べるプログラムを作成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画にやや遅れを生じているもっとも大きな理由は、コロナ禍による緊急事態宣言などにより研究を進めてきた大学院生が、満足に研究室にくることができなかったことである。そのような状況を受け、オンラインでの議論を行い、院生を含めたオンラインでの計算環境・研究環境の改善を図ったが、遅れが生じたことは残念である。特に、実験室で行う必要がある実験については、遅れが顕著であった。
現在、遅れを取り戻すため、精力的に研究を進めているが、未だ様々な制約が多く、苦労している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、院生も含めたオンラインでの研究環境はほぼ整っている。これを利用し研究を推進する。具体的な今後の研究の推進方策を以下に記す。 マクロな弾性体における前駆滑りと摩擦に関しては早急に有限要素法のプログラムを完成し、数値的に様々な系における前駆滑りが摩擦に及ぼす効果を調べる。関連してスロー地震と通常の地震の関係を数値的に明らかにする。 介在物のある系の摩擦、粉体の摩擦に関しては、個別粒子法により調べる。実験研究についても進めたい。 基盤上の原子フレークのダイナミクスと超潤滑に関しては分子動力学法によりいくつかの物質に対して超潤滑の条件を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により国内、海外出張がなくなったため。
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