2022 Fiscal Year Research-status Report
量子可積分性を利用した可積分確率過程の新規創出とその解析
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20K03793
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
堺 和光 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (10397028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 康平 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30583033)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 可解模型 / 量子可積分系 / 確率過程 / 対称多項式 / 量子計算 / 量子コンピュータ / 量子ウォーク / 量子ランダムアクセスメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の過程で進展した量子ウォークを用いた普遍量子計算について,更なる研究の展開があった.すなわち,2つの内部自由度を有する多粒子量子ウォーカーを用いた,量子ランダムアクセスメモリの実装を提案した.量子ランダムアクセスメモリは,情報の量子的な重ね合わせの実現や,量子情報を保存する際に重要となる量子デバイスである.2つの内部自由度をもつ量子ウォーカーとして,電子(内部自由度:スピンアップ状態,スピンダウン状態)などで簡単に実現可能である.この方法は,これまで提案されてきた量子ランダムアクセスメモリと比較して,手順の簡略化,量子ビットなど量子リソースを削減できる点,コヒーレント状態の維持のしやすさ,時間的な制御が不要であるなどの利点がある.
また,以前行った量子代数とグラスマン束の押し出し公式の対応の研究を一般の旗束に拡張した.確率R行列より構成される高ランクの量子代数のある交換関係式を導出し,A型の旗束の対称化作用素による押し出し公式の表示との類似性を利用して,境界条件の順番をひっくり返したある2つのタイプの分配関数が旗束の押し出し公式で結び付くことを証明した.更に完全旗束の場合、中川ー成瀬による押し出し公式の結果と組み合わせることで,高ランク頂点模型によるグロタンディーク多項式の新たな分配関数による表示を導出した.また,R行列を有理型のものに取り換えることにより、コホモロジー版の押し出し公式やシューア多項式の分配関数による表示も導出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の過程で,ランダムウォークの量子版とも言える量子ウォークを用いた,新たな普遍量子コンピュータの提案およびその実装を行うという当初の計画にはない予想外の進展があった.これをさらに進展させ,時間制御の必要性がない量子ランダムアクセスメモリの新しい実装方法を提案した.その反面,本来の研究計画である新規な可積分確率過程に関する研究計画には遅れが見られる.
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Strategy for Future Research Activity |
量子的な確率過程を用いた,普遍量子コンピュータの提案や量子ランダムアクセスメモリの実装という研究計画当初とは予想外の研究の進展があったが,可積分性を利用した,量子誤り訂正などへの研究に発展させる予定である.
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Research Products
(9 results)