2023 Fiscal Year Annual Research Report
量子可積分性を利用した可積分確率過程の新規創出とその解析
Project/Area Number |
20K03793
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
堺 和光 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 教授 (10397028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 康平 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (30583033)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 可解模型 / 量子可積分系 / 高階スピンXXZ模型 / 対称多項式 / スピン輸送 / 一般化流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,量子可積分性と確率過程の研究である.一方,局所的な保存量が無限に存在する量子可積分系特有の性質に起因する興味深い非平衡現象も,理論・実験の両面から報告されている.本研究の派生となるが,最終年度は可積分な高階スピンXXZ鎖の臨界領域におけるスピンDrude重みの厳密解を導出した.この領域ではスピン輸送特性は弾道的であり,有限のDrude重みを持つ.本研究では,まずスピン量子が任意の可積分XXZ鎖の熱力学量を特徴づける熱力学的Bethe仮説 (TBA) 方程式を量子転送行列法とT-system,Y-systemを用いて新たに構成し,さらに一般化流体力学を援用して有限温度のDrude重みを厳密に導出した.この研究により,高階スピンXXZ鎖のDrude重みが,相互作用の強さに対してフラクタル的に振る舞うという顕著な特性が明らかにされた. 次に,本研究計画の数理的側面についての成果の概要を述べる.野海,三町,キリロフ,梶原らによって導入されたソース恒等式で現れる,有理関数のGaudin-Izergin-Korepin型表示を含む様々な行列式表示を系統的に導出した.また楕円類似を導入し,更に大川による壁越え公式を適用した幾何学的導出を行った.また,四面体方程式の解から構成されるある分配関数とシューア関数やループ基本対称関数との対応を導出した.さらに,4種類の離散時間の完全非対称排他過程の遷移確率が(双対)グロタンディーク多項式の多パラメータ拡張と対応することを岩尾による自由フェルミオンと非可換作用素の作用による記述を用いて示した.最後に,高ランク量子可積分系の分配関数とウェイト関数の拡張の対応を示した.
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