2020 Fiscal Year Research-status Report
The mechanism of the multistability in competing systems of long-range interactions of elastic origin and their novel cooperative phenomena in photoinduced phase transitions
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20K03809
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西野 正理 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主幹研究員 (80391217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 精二 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (10143372)
渡邊 浩 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (50625316)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光誘起相転移 / フラストレーション / 電子格子相互作用 / 弾性相互作用 / 長距離相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピンクロスオーバー(SC)系は光などの外部刺激でマクロな状態変化を引き起こす。最近の合成技術の進歩により、異なる種類のSC化合物を組み合わせたコンポジットの設計が可能になり、特に2種類のSC化合物で構成されるCore-Shell系ナノコンポジットの物性はデバイス応用の可能性からも注目されている。本年は、Core-Shell系の微視的モデル化を行い、温度で誘起されるマルチステップ転移現象とその機構について調べた。まず、active Coreとactive Shellそれぞれに対して、構成分子の電子およびスピン状態と構造(体積)が結合して変化する仕組みおよびエントロピー効果などの定式化を行い、SCナノコンポジットモデルを構築した。この系は、低温ではlow spin状態、高温ではhigh spin状態が実現するが、温度変化の過程で系の界面で弾性的フラストレーションが生じ、その効果がCore、Shellそれぞれの圧力分布に影響を与えて、構造と結合した電子・スピン状態に多重安定性をもたらし、その結果、温度で誘起されるマルチステップの転移が起こることを見いだした。また、磁化と構造変化において、それぞれの転移温度が異なる場合があることを見いだした。本研究で明らかにしたこの系の準安定、多重安定の性質は、SC系のナノコンポジットが様々な外部刺激に対して特有の応答をする可能性を示唆するものであり、関連実験研究にも有用な情報を与える。また、ここで見いだした性質は、SC系同様、電子およびスピン状態と構造(体積)が強く結合して状態変化する系に普遍的なものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、これまで、スピンクロスオーバー(SC)系の協力現象の研究において、様々な種類の準安定および多重安定性を含む相構造見いだしてきたが、本年は、最近のトピックである異なるSC系が組み合わさったコンポジット系に対象を拡げた。その中で、特に、2種類のSC系によるナノコンポジットの協力的相互作用のモデル化と理論、計算による研究を進め、low spin-high spin転移における準安定、多重安定性の特徴を示した。特に、界面での弾性的フラストレーションがその発現に重要であることを明らかにしたが、ここで見いだした性質は、それぞれ単独のSC系でのlow spin-high spin転移の性質からは予想できない複合系に特有の非自明な性質であり、SC系の協力現象における新しい知見である。また、ここで開発したモデルや理論、計算結果は同様の機構が働く他の物質系へ広く適用できる。これらは本研究課題の成果であり、計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
SC Core-Shellナノコンポジット系の温度誘起low spin-high spin転移における協力現象の解析を引き続き行う。CoreとShellのそれぞれの物理パラメーター空間において、ある特定の空間領域に限定して解析を行ってきたが、未調査のパラメーター領域についても同様に安定、準安定(多重安定)性の解析を行う。さらに、SC系(複合系でない)におけるマルチステップ機構についても研究を進める。これらの系における外部刺激による応答に注目し、特に、フェムト秒レーザーの光励起によるスイッチング現象に関するモデル化と方法論の開発を行っていく。また、より大きな系を取り扱えるシミュレーション手法やプログラム開発も行う。
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Causes of Carryover |
次年度以降当初予定より人件費が必要になる見込みのため、初年度の支出を抑えた。 使用計画に関して、次年度分と合わせて、主として計算機部品及び人件費に使用する予定である。
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[Presentation] SmSのX線吸収分光を用いた光励起価数転移ダイナミクス2021
Author(s)
渡邊浩, 中村拓人, 柴田友里亜, 山神光平, 平田靖透, 池田啓祐, Yujun Zhang, 和達大樹, 井村敬一郎, 鈴木博之, 佐藤憲昭, 木村真一
Organizer
2021年日本物理学会年次大会
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