2020 Fiscal Year Research-status Report
Theory of magneto-thermal transport by quantum clusters
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20K03810
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
森 道康 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (30396519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椎八重 航 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (20273253)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォノンホール効果 / 希土類ガーネット / 中性子散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォノンホール効果とは、フォノンによって運ばれる熱流が、磁場下において横伝導を示す現象である。そして、本研究課題で対象としている電子クラスターによるフォノンホール効果を計算するためには、電子系の角運動量変化とフォノンの運動量変化を含んだ多数の共鳴散乱振幅を見積もる必要がある。そのための一般的な定式化を行った。この定式化の妥当性を検証するため、希土類ガーネット(テルビウムガリウムガーネット、TbGG)に当てはめて、フォノンホール効果の磁気方位依存性の評価を進めた。評価を進めるにあたり、J-PARCのBL14(AMATERAS)で非弾性中性子散乱実験を行い、磁場に依存して変化する結晶場励起を見出した。この実験結果と結晶場に対する電子状態計算とを比較することで、結晶場励起を与える電子状態の波動関数を決めることが出来た。また、結晶場励起とフォノン励起の交差する近傍を解析して、準位反発している可能性が見られた。しかし、データの精度が不十分だったため、定量的評価には至らなかった。 希土類鉄ガーネット(RIG)はフェリ磁性体であり、キュリー温度以下で磁化が消失する磁気補償を示すものが知られている。本課題に関連する研究として、補償温度近傍における核磁気共鳴の緩和時間の変化を計算した。その結果、フェリ磁性体中にある複数のサイトのなかで、周囲との結合が弱いサイト上の緩和時間が、補償温度近傍で急速に短くなりうることが分かった。一方、今回の計算で用いたフェリ磁性体の模型とRIGとでは、単位胞に含まれるサイト数に違いがあり、この点を取り込む必要であることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で対象としている電子クラスターによるフォノンホール効果を計算するためには、電子系の角運動量変化とフォノンの運動量変化を含んだ多数の共鳴散乱振幅を見積もる必要がある。そのための一般的な定式化を行い、希土類ガーネットを用いた検証が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた一般化された散乱振幅を、電子クラスターに用いてフォノンホール効果の計算を進める。六角形の中心に余分なサイトが加わった系のハバード模型を厳密対角化で解く。格子変位を加えて得られた波動関数を用いて、フォノンの共鳴散乱振幅を評価する。そして、電子クラスターによるフォノンホール効果の計算を行う。
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Causes of Carryover |
当初計画において、令和2年度に参加予定だった会議がオンライン形式に変更になったことや購入を予定していた計算機が在庫不足で購入を見送ったことから次年度使用額が生じた。次年度使用額は、令和3年度分経費と合わせて、令和3年度後半に開催予定の会議や参加を予定している放射光施設での実験に係る旅費及び令和2年度の購入を見送った計算機の購入費用として使用する。
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