2022 Fiscal Year Research-status Report
量子微細構造における動的核スピン分極のコヒーレンス創発
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20K03814
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
青野 友祐 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (20322662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小峰 啓史 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90361287)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子微細構造 / 核スピン / 電気伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子スピンから核スピンへの分極を転送する動的核スピン分極(DNP)はNMRによって検出できるが、NMR信号を電気抵抗変化として検出する抵抗検出型NMR法が開発され、半導体ナノ構造におけるDNP 生成が検出されている。 今年度は面内磁場における量子ポイントコンタクト(QPC)におけるガウス型乱れポテンシャル下でのDNPについての数値計算による研究を中心に実施した。QPCのコンダクタンスのゲート電圧依存性においては、QPCのポテンシャル構造が反映される。通常のQPCポテンシャルにおいては、コンダクタンスのゲート電圧依存性のスロープの幅がポテンシャルの曲率を与えると考えられているが、一方で最近の実験においては、QPCのサイズを変えてもQPC曲率がほとんど変化がないことが示され、この結果が乱れポテンシャルによってもたらされていると示唆されていた。 数値計算解析により、乱れポテンシャルがない場合については、QPC近傍のソース電圧側で下向きの核スピンが、ドレイン電圧側で上向きの核スピンが分極する双極子型の(QPC中心でゼロの)DNPを生成されるという我々が以前に得た結果を再確認した 。ガウス型乱れポテンシャルがあるQPCにおいては、QPC中心において有限のDNPが誘起されうることを見出した。DNPは、乱れポテンシャルの特徴的な長さスケールに依存した、ゲート電圧特性を示すこともわかった。乱れポテンシャルの影響は、量子化コンダクタンスを単位として、コンダクタンスGが1.5付近で最も顕著になることを示した。この結果より、G=1.5付近においては、QPCの電荷状態が乱れポテンシャル変調に敏感であることを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子微細構造における動的核スピン分極について解明することを目的としているが、令和4年度は、量子ポイントコンタクトにおける動的核スピン分極についての数値計算に関する研究計画について、ガウス型相関をもつ乱れポテンシャルの効果についての数値計算を遂行して、これまで結果を得ていた乱れのない量子ポイントコンタクトにおける動的核スピン分極とは定性的に異なる結果を得ることができ、また乱れポテンシャルによりコンダクタンスと核スピン分極の間の相関についての知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究計画に基づいて、量子ポイントコンタクト(QPC)を流れる電流に起因した電子スピンによるQPC近傍における動的な核スピン分極のコヒーレンスの創発と制御に関する研究を推進する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、国内外学会の旅費と参加費の使用額について、予定から変更が生じた。今年度も研究計画を進めるために必要な数値計算環境の補充のための経費および研究成果発表のための経費として使用する計画である。
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Research Products
(6 results)