2023 Fiscal Year Research-status Report
量子微細構造における動的核スピン分極のコヒーレンス創発
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20K03814
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
青野 友祐 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (20322662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小峰 啓史 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90361287)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 量子微細構造 / 核スピン / 電気伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
NMR法を用いて電子スピンから核スピンへのスピン分極転送である、動的核スピン分極(DNP)を検出することが可能である。NMR信号を電気抵抗変化として検出する抵抗検出型NMR法が開発され、量子ポイントコンタクト(QPC)におけるDNP生成が検出されている。昨年度までに、QPC近傍のソース電圧側で下向きの核スピンが、ドレイン電圧側で上向きの核スピンが分極する双極子型の(QPC中心でゼロの)DNPを生成されるという、我々が以前に得た結果を数値的に再確認していた。QPC近傍における DNPについての数値計算による研究を継続した。 今年度は、QPCポテンシャル形状を変えた場合にDNPの様子がどのように変化するかについて注目した。その理由は、QPCの電気伝導においては、QPCのポテンシャル構造が反映されるためである。典型的なQPC構造においては、QPCポテンシャルをガウス型として扱い、その場合には、コンダクタンスのゲート電圧依存性のスロープの幅がポテンシャルの曲率を与える。QPCの形状がガウス型からずれたときの一つの例として、コンダクタンスのなかに量子干渉効果であるファブリー・ペロー振動が見られる場合がある。実際に、最近の実験において、ゲート電圧依存性のなかにファブリー・ペロー振動が観測されている。この場合には、QPCポテンシャルが量子共振器として働くような平らな構造をもっているとすると説明がつく。QPC構造が共鳴箱として機能して、擬閉じ込め状態が形成されるためである。QPC中央部に平らなポテンシャルをもつ構造に対してDNP構造の数値解析を進めた。その結果、DNPの構造においても量子干渉効果を反映した振動構造が見られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子微細構造における動的核スピン分極について解明することを目的としているが、令和5年度は、量子ポイントコンタクトの動的核スピン分極についての数値計算に関する研究計画について、ファブリー・ペロー型の干渉効果を示す量子ポイントコンタクトにおける核スピン分極について数値計算を行い、核スピン分極において、量子干渉効果を反映した振動構造がみられることに関する知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、研究計画に基づいて、量子ポイントコンタクト(QPC)を流れる電流に起因した電子スピンによるQPC近傍における動的な核スピン分極のコヒーレンスの創発と制御に関する研究を推進する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響が残り、国内外学会の旅費と参加費の使用額について、予定から変更が生じた。今年度も研究計画を進めるために必要な数値計算環境の補充のための経費および研究成果発表のための経費として使用する計画である。
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