2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of huge thermoelectric response in the quantum Hall systems
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20K03817
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 彰 東京大学, 物性研究所, 助教 (20260515)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱電効果 / 量子ホール系 / 熱伝導率 / 2次元電子系 / 整合性磁気抵抗振動 / 3オメガ法 / モットの関係式 / ヴィーデマン・フランツ則 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱電応答性能を表す無次元性能指数ZTの評価に必要となる熱伝導率の測定手法開発をさらに進めた。バルク試料で用いられる熱伝導率測定法である3ω法と呼ばれる手法を量子ホール系(磁場下の2次元電子系)に応用し、ジュール加熱による温度上昇、及び熱伝導率を導出する手法を確立した。初年度は温度検出にShubnikov-de Haas振動振幅を用いていたが、本年度はホール抵抗のプラトー間での傾き等、他の抵抗現象も温度検出に使用可能であることを明らかにした。また、熱流出の抑制が期待できる、量子ホール系と直接の電気的接触を持たない表面ゲートを用い、電気容量の量子振動振幅の温度依存性から温度検出を行うための基礎データを収集した。 量子ホール系に1次元周期的ポテンシャル変調を加えた1次元平面超格子では、熱起電力テンソルおよび熱伝導率テンソルの整合性磁気振動の新たな解析的表式の導出を行い、振動の振幅、位相と変調の振幅、周期、散乱時間との関係を可視化した。初年度にホール抵抗の整合性磁気振動の振幅が従来の理論的予想よりはるかに小さいことを実験的に確立したが、このことと新たに導出した表式から、従来の理論に反して、熱起電力テンソルの対角成分(ゼーベック係数)が大きな異方性を持つこと、および2つの非対角成分(ネルンスト係数)には大きな違いがあり、温度勾配が周期の方向と直交する場合の非対角成分が、他の対角・非対角成分と比較して圧倒的に大きな振動成分を含むことを明らかにした。また熱起電力、熱伝導率に対し、それぞれMottの関係式、Wiedemann-Franz則が良い近似となるための条件を明確化した。 最も大きな熱電応答が期待出来るコルビノ型試料の設計にも着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子ホール系の熱伝導率を測定する手法として、3ω法の有用性が明確化出来た。温度測定の手法として、様々の抵抗現象や電気容量を用いることにより、より広い磁場領域や多様な試料形状で熱起電力・熱伝導率測定が可能であることを明らかにした。 1次元平面超格子の熱起電力・熱伝導率の整合性磁気振動に関して、解析的表式の導出により、振動振幅・位相および異方性に関して大きく理解を進めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在設計を行っているコルビノ型試料について、実際に試料を作製し、希釈冷凍機内で熱起電力・熱伝導率の測定を行うことにより、量子ホール領域にて理論的に予想されている巨大な熱電応答(大きな無次元性能指数ZT)を実験的に実証する。
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Causes of Carryover |
主として成果発表のための学会参加の旅費として用意していた予算が、学会が感染予防のためオンラインに変更されてしまったため、今年度は使用する機会が無かった。次年度参加予定の国内・国際学会は現地開催が予定されており、この旅費として有効に使用することを計画している。
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Research Products
(3 results)