2022 Fiscal Year Annual Research Report
偏極中性子小角散乱によるSr2RuO4のスピン帯磁率の精密測定と超伝導対称性決定
Project/Area Number |
20K03832
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
古川 はづき お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (70281649)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超伝導 / 超伝導対称性 / 中性子散乱実験 / 単結晶試料 / スピン帯磁率 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペロブスカイト型酸化物超伝導体Sr2RuO4については、スピンシングレットを示唆する実験結果も多数報告されてきたが、17O-NMRナイトシフトがTc以下低温まで不変であるとしたNMRの実験結果を確固たる証拠として、長年に渡り「p波超伝導」が強く主張されてきた。しかし、近年になり、他のグループが17O-NMRナイトシフトがTc以下で減少することを報告、さらに、これが他のグループによっても追認されたことから、この議論が再炎している。 超伝導対称性の確定には、phase sensitiveな実験と3磁場方向(//[100], [110], [001])に対するスピン帯磁率の温度依存性の精密な測定が必須である。本研究では、中性子小角散乱法に、磁気散乱だけを選択的に抽出する偏極解析法を適用した偏極中性子小角散乱の技法を用いて3磁場方向のスピン帯磁率の精密測定を行い、Sr2RuO4の超伝導対称性の確定することを目的とした。 令和4年度は、令和3年度にフランスラウエランジュバン研究所(ILL)D33で行なったリモートによる中性子小角散乱実験データの解析及びその追試に向けた実験準備・検討を行なった。結果的に、ILLの中性子小角散乱実験では、磁気成分の変化を検出することができなかった。その原因として、中性子ビームの進行方向に広がるバックグランドである前方散乱に対して、磁気散乱強度が弱く、S/N比が足りなかったことが考えられた。その後、前方散乱を避けるために小角散乱以外の手法でこれを追試する方法を考え、それを実行するためのビームタイムを得るために課題申請をおこない、実験準備を開始した。今後、ビームタイムを確保できた段階でその実験を実施していくことになる。
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