2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on generation and high-speed driving of skyrmion in the multilayered films with antiferromagnetic coupling
Project/Area Number |
20K03836
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 雅章 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50508405)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / 相関交換結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
「強磁性/非磁性/強磁性」の3層からなり,上下の強磁性層の磁化が反対を向いて安定する反強磁性結合多層膜を用いて反強磁性結合が磁壁構造へ与える影響を調査した.垂直磁化の強磁性層として{Tb/Co}_4,{Co/Tb}_4,非磁性層としてRuを用い,スピン注入層として上部にPt層を用いた{Tb/Co}_4/Ru/{Co/Tb}_4/Pt構造で,Ru層の膜厚を変えることで反強磁性結合エネルギーを変えた細線を作製した.細線にパルス電流を印加した際の磁壁の駆動の様子から反強磁性結合が磁壁構造や磁壁の安定性に与える影響を評価した.実験から次のことが明らかになった.この構造の細線では磁壁はネール磁壁の成分を持つため,Pt層のスピンホール効果によるスピン流で駆動できることがわかった.また細線上の磁壁を細線長手方向の外部磁場でブロッホ磁壁にするために必要な磁場の大きさを調べ,反強磁性結合がない細線では必要な磁場が100 Oe以下であったが,反強磁性結合をもつ細線では反強磁性結合エネルギーの大きさに依存して大きくなり,最大で1000 Oe以上必要であることがわかった.このことから反強磁性結合によりネール磁壁が安定することがわかった.次にランダウ・リフシッツ方程式を用いたマイクロマグネティック・シミュレーションを用いて反強磁性結合が磁壁の磁気モーメントに与える影響を調べ,反強磁性結合で生じる上下の磁気モーメントの結合が磁壁構造を安定化していることを明らかにした. さらに反強磁性結合を持つ強磁性多層膜上の渦磁区構造の安定性をマイクロマグネティック・シミュレーションで調べた.反強磁性結合を持つ細線では上下の強磁性層の磁壁の磁気モーメントが反対方向を向くことで静磁気的な結合が生じるため,渦磁区構造が安定化出来ることがわかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究から{Tb/Co}_4/Ru/{Co/Tb}_4/Pt構造でRuの膜厚を変えて上下の強磁性層の層間磁気結合エネルギーの符号や大きさを変えた細線では,すべての試料でネール磁壁の要素を持つことを明らかにした.また,反強磁性結合をもつ場合,その結合の大きさが大きくなるとネール磁壁の安定性が上昇することがわかった.強磁性細線上で渦磁区構造を安定化する場合,通常は強磁性/重金属積層構造の界面で生じる界面ジャロシンスキー・守谷相互作用を用いる.本研究では界面ジャロシンスキー・守谷相互作用の他にネール磁壁の安定化につながる方法として反強磁性結合を用いることが可能であることを示唆する結果である. またランダウ・リフシッツ方程式を用いたマイクロマグネティック・シミュレーションから,反強磁性結合を有する多層膜では層間の静磁的な結合により安定化出来るため,消失半径以下の微小な渦磁区が消えずに存在できることを明らかにした.
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は{Tb/Co}_4/Ru/{Co/Tb}_4/Pt構造を用いて反強磁性結合をもつ細線に生成した磁壁について調査を行う.実験では磁壁を生成した細線にシグナルジェネレーターを用いて2GHz~20GHzの範囲で細線に高周波電流を印加して,発生する直流成分の調査を行う.高周波電流を印加した際,磁壁部分の磁気モーメントのラーモア歳差運動により共鳴吸収が生じる周波数を調査することで磁壁の磁気モーメントが層間の静磁的な結合によりどのようにネール磁壁が安定化されるかを調査する.また,シミュレーションでは上記のラーモア歳差運動の再現を行う.また反強磁性結合構造で安定した渦磁区構造に高周波電流を印加した際の渦磁区構造の振動の周波数を確認し,新しいデバイスに応用できるか検討をする.
|
Research Products
(4 results)