2021 Fiscal Year Research-status Report
高圧力下熱伝導率・比熱測定によるユウロピウム系化合物の圧力誘起価数転移の研究
Project/Area Number |
20K03837
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
西郡 至誠 島根大学, 学術研究院理工学系, 准教授 (50273917)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 価数転移 / 圧力効果 / 比熱 / 熱伝導率 / 希土類化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度作製したEuPd2Si2の試料について高圧力下における熱伝導率・比熱および電気抵抗率測定を実施するとともに、EuRh2Si2の試料作製を継続して試行した。また、EuNi2Ge2関連物質の試料作製および物性測定を開始した。EuPd2Si2は常圧で170Kに比熱のピークと熱伝導率の極小を持つが、これはEuイオンの価数が高温領域の2価に近い状態から3価に近い状態へと急峻に変化することに起因する。加圧をすると比熱のピークは急激に抑制され、0.6GPaで消失した。それに伴い熱伝導率の極小はブロードなものへ変化した。電気抵抗率がヒステリシスを伴わず 1次転移的な異常を示さないことを考え合わせると、EuPd2Si2は常圧下において価数転移が消失する臨界端点の近傍にはあるがすでに価数転移が消失した状態にあり、価数の揺らぎが非常に大きいために比熱にピークが現れるが、加圧によって臨界端点から遠ざかるとそれが抑えられていくと解釈できる。 EuRh2Si2については未だ純良な試料を得るに至っていないが、それに代わるものとしてリガンドの元素の融点が低く作成が比較的容易なEuNi2Ge2関連物質(GeをSiによって15%置換した物質)を作製し測定を開始した。EuNi2Ge2はEuRh2Si2と類似した圧力相図を示す物質だが高い臨界圧力を持つ。Siで15%置換した化学的圧力効果が加わるため比較的低圧力で目的の圧力効果が測定出来ると期待される。実際に常圧では反強磁性体であること、低い圧力で価数転移が出現することを確認し、継続して圧力下熱伝導率・比熱を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
主眼であるEuRh2Si2の試料作製が順調で無いため上記区分とした。 但し、EuPd2Si2の測定は順調であり、また新たにターゲットとしたEuNi2Ge2の部分置換系の試料作製も完了しているので、この置換系においてEuRh2Si2で観測を目指した現象と同等の圧力効果が得られれば、"Eu2価の磁気秩序状態から価数転移および臨界端点を経て転移を伴わない価数揺動状態まで、電子状態の移り変わりを熱力学的に追いかける"という当初の目的を果たせると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
EuNi2Ge2のSi置換系は測定が始まったところであるが、令和4年度の前半で集中して測定を実施する計画である。並行してEuRh2Si2の作製も継続し、後半では測定に着手したい。現在、圧力下の比熱の結果からエントロピーの見積もりおよびその解釈を行うための手法の開発・検討を行っており、圧力下におけるEuの価数の不安定性について系統的な議論が行えるようにしたい。 低温実験に利用する装置は共同利用の機器なので、液体ヘリウム代および運用の電気料金を供出することで実験時間を確保したい。
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Causes of Carryover |
年度末に低温測定装置の電気料金を支払うつもりで準備していたが思いの外請求が無く、多めに余らせてしまった。最終年度である令和4年度はマシンタイムを多く取りたいので、この資金を活用して研究を推進したい。また、国際学会を始め成果を報告したいのでその旅費にも使用したい。
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