2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03843
|
Research Institution | Research Institute for Electromagnetic Materials |
Principal Investigator |
池田 賢司 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局, 研究員(移行) (40769569)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 伸聖 公益財団法人電磁材料研究所, その他部局等, 研究員(移行) (70205475)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ナノグラニュラー薄膜 / 磁気光学材料 / ファラデー回転角 / 保磁力 |
Outline of Annual Research Achievements |
零磁界でファラデー回転角を有する薄膜材料を作製することを目的として、マトリックス材料としてシリコンナイトライド(SiN)、磁性金属にFe60Co40合金を用いてナノグラニュラー薄膜を作製し、その磁気光学特性を解析した。 雰囲気ガスにArと窒素の混合ガスを用いた反応性スパッタにより、FeCoナノ粒子がSiNマトリックス中に分散したナノグラニュラー構造が形成されることが確認された。その磁気光学特性は窒素ガスの比率により大きく変化し、赤外通信波長帯(1550 nm)におけるファラデー回転角は、窒素ガス比率が20%で最大値となり、その絶対値は5.0deg/μm以上の大きいファラデー回転角が得られることが明らかとなった。窒素ガスの比率を80%以上に増加させると、ファラデー回転角の大きさは減少する傾向にあるが、その磁化曲線が超常磁性から強磁性へと変化し、1kOe以上の大きい保磁力が確認された。保磁力の値は磁性金属含有量によって変化し、その最大値は2.2kOe、ファラデー回転角の絶対値は10kOe印加時に2.3deg./μm、零磁界でのファラデー回転角は0.8deg./μmとなり、零磁界でのファラデー回転角の発現を確認した。 高い保磁力が得られた試料についてTEMによる構造解析を行ったところ、50nm以上の粒径を有するFeCo粒子がSiNマトリックスに分散した構造が確認された。FeCo粒子の粒径が大きくなり、磁気異方性エネルギーが熱エネルギーより大きくなったことが強磁性となった原因であると推測できる。一方、強磁性が得られた試料は光透過性が大幅に低下しており、1550nmにおける透過率は1-2%にとどまる。ナノ磁性粒子の粒径の増加、SiNマトリックスの窒素欠損などが影響していると推測される。挿入損失を低減するため、光透過性の改善が今後の主要な課題となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きい保磁力を有する強磁性を示すナノグラニュラー薄膜の作製が可能となり、零磁界でのファラデー回転角が確認されたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ナノグラニュラー薄膜の磁性ナノ粒子にCo合金などの結晶磁気異方性の大きい材料を適用することにより、磁気異方性エネルギーが熱エネルギーに対して優位な状態を形成して強磁性を示し可能な限り粒径の小さい磁性粒子を形成する条件を確立する。 磁性金属組成およびスパッタ作製条件などを検討することにより、磁性ナノ粒子の粒径・結晶性を制御し、保磁力及び残留磁化の大きい磁化状態を実現する。 マトリックス材料の組成比率の最適化などにより光透過性を改善し、磁性金属粒子の粒径制御を併せて検討することにより、磁気光学特性の性能指数の向上を図る。
|