2021 Fiscal Year Research-status Report
層状有機伝導体における三角格子構造の異方性と電子状態の解明
Project/Area Number |
20K03856
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川本 正 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (60323789)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機伝導体 / モット絶縁体 / 電荷秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドナーとアニオンが1:1組成でドナーがユニフォームスタック構造をもつ、真性モット絶縁体(BEDT-TTF)TaF6の多形体構造を見出した。ドナー分子が分子短軸方向にスライドしながらスタックするbeta''構造に近いが、スタック間にアニオンが存在するためスタック間の相互作用がほとんどない構造となっている。バンド計算の結果は極めて1次元性の強いことを示している。電気抵抗が温度を下げると増大していくことから、この物質も真性モット絶縁体であることが明らかになった。beta-(BEDT-TTF)TaF6が四角格子構造であることとは対照的な構造をもつモット絶縁体であるといえる。
ドナー分子と1価のアニオンが2:1組成の物質において、ドナーが4量体構造をもつ物質はバンド絶縁体となるのが普通である。(DMEDO-TTF)2ReO4は、ドナー分子が4量体構造をとりながらスタックする構造をしている。そのような構造にも関わらず、電気抵抗は金属的な振る舞いを示す。構造に基づいてバンド計算を行ったところ、スタック間方向のトランスファー積分が大きいことから、小さなフェルミポケットが現れる半金属的なバンドをもつことが明らかになった。低温で絶縁化することや、電子スピン共鳴の結果から基底状態は非磁性絶縁体であることが明らかになった。低温でも超格子反射は観測されず、構造は室温と酷似している。結晶学的に独立なドナー分子が2つあることから結合距離を比較したところ、室温では結合距離の違いは見出せないが、低温では明らかに異なることを見出した。したがって基底状態は電荷秩序の状態にある。4量体の中心の2分子と端の2分子が異なる価数を持つことは隣接サイト間でのクーロン反発による電荷秩序とは矛盾するため、別の機構による可能性があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1次元性の強い真性モット絶縁体は極めて稀にしか得られない結晶であり、残念ながら電子スピン共鳴等の磁性に関する実験を行うに至らなかった。したがって、低温でスピンパイエルス転移を起こすことが予想されるが、実験で確認するには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
異方性の強い三角格子を有するkappa-(BEDT-TTF)2TaF6の結晶が得られていることから、この物質の輸送特性やスピン磁化率で観測されている220 Kでの異常について明らかにするため、低温でのX線回折を行う。また、ダイマーモット絶縁体であるこの物質において、圧力による金属化や超伝導発現の可能性を明らかにしていく。
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[Journal Article] Superconducting super-organized nanoparticles of the superconductor (BEDT-TTF)2Cu(NCS)22021
Author(s)
D. de Caro, K. Jacob, M. Revelli-Beaumont, C. Faulmann, L. Valade, M. Tasse, S. Mallet-Ladeira, S. Fan, T. Kawamoto, T. Mori, J. Fraxedas
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Journal Title
Synth. Met.
Volume: 278
Pages: 116844-1-7
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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