2021 Fiscal Year Research-status Report
Spin transport phenomena induced by quantum geometric structure in topological superconductors
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20K03860
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水島 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50379707)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカル超伝導 / スピン輸送 / スピンネルンスト効果 / スピンゼーベック効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究年度は、主に、トポロジカル超伝導体における外因性機構による新奇なスピン輸送について研究を行った。具体的な成果として、(1)時間反転対称なトポロジカル超伝導体における異常スピンネルンスト効果と、(2)時間反転対称性を破ったトポロジカル超伝導体における異常スピンゼーベック効果が生じることを明らかにした。両者ともCooper対の持つ対称性を直接反映した熱スピン交差相関応答であることがわかった。すなわち、異常熱スピン交差相関応答を調べることで、直接的にCooper対の情報を検出することが可能となる。異常スピンネルンスト効果は、Cooper対のヘリシティによってBogoliubov準粒子が不純物においてスピン依存する非対称散乱することに由来している。さらに、時間反転対称性が自発的に破れた超伝導体では、Cooper対の非ユニタリ性に由来して異常スピンゼーベック効果が生じる。これは、温度勾配に沿って準粒子が媒介するスピン流が現れることである。通常のゼーベック効果は、温度勾配に沿って生じる準粒子による電流が、超伝導電流によって完全に遮蔽される。一方で、異常スピンゼーベック効果は超伝導電流の効果を取り込んでも、完全に遮蔽されないことがわかった。以上から、トポロジカル超伝導体における異常な熱スピン交差相関応答とCooper対の対称性の直接的な関係を明らかにし、スピンカロリトロニクスの舞台としての新たな可能性を切り拓いた。(1)の成果は既に論文として出版されており、現在、(2) の成果について論文として取りまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、トポロジカル超伝導体における外因性の異常スピンネルンスト効果や異常スピンゼーベック効果を明らかにした。特に、ヘリカル超伝導体において一般に異常スピンネルンスト効果が生じることや、これらの熱スピン交差相関応答がCooper対の持つ対称性に直接的に由来していることを明らかにした。これらの成果によって、トポロジカル超伝導体における外因性機構による熱スピン交差相関応答を包括的に理解することが可能となった。今年度得られた知見は、中性子星内部の3P2超流動や、液体3Heの超流動へと適用することが可能である。以上から、本研究課題は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果によって、バルクのトポロジカル超伝導体における外因性機構による熱スピン交差相関応答が明らかとなった。次年度以降は、以下の3つの要素を取り込むことで、トポロジカル超伝導体における新奇なスピン輸送現象を探求する:(1)Cooper対のトポロジーに由来する内因性機構、(2)スピン3重項Cooper対の集団励起(超流動スピン流)のスピン輸送への寄与、(3)ドメイン壁や表面などに局在するトポロジカルに守られたギャップレス準粒子状態のスピン輸送への寄与。(1,2,3)の全ての要素を取り込んだ準古典Keldyshグリーン関数による準古典輸送理論を構築し、トポロジカル超伝導体における熱スピン交差相関応答を議論する。トポロジカル超伝導では、一般に、時間反転対称性や回転対称性など、さまざまな対称性の自発的破れを伴う。これらは、異なるトポロジカル不変量で特徴づけられ、異なるスピン輸送現象をもたらすと期待される。さらに、Cooper対の持つ対称性は、その集団励起にも大きな影響をもたらし、超流動スピン流応答にも影響を与えると期待される。今後は、Cooper対の持つさまざまな対称性に注目することで、トポロジーに由来した内因性機構や集団励起、さらに、トポロジカル欠陥に局在した準粒子の寄与などを系統的に調べていく。
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Research Products
(8 results)