2022 Fiscal Year Research-status Report
Spin transport phenomena induced by quantum geometric structure in topological superconductors
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20K03860
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水島 健 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (50379707)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカル超伝導 / スピン輸送 / 集団励起 / 交差応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の2つの主な研究成果があった。(1)カイラル超伝導体や非ユニタリ超伝導体における交差相関応答。(2)超伝導UTe2における内因性由来の熱ホール効果。(1)については、まず、時間反転対称性を自発的に破ったカイラル超伝導体における異常音響電気効果を明らかにした。カイラル超伝導体には、位相モード(南部ゴールドストーンモード)や振幅モード(Higgsモード)以外にも、超伝導秩序変数の集団励起モードとしてClappingモードが存在する。Clappingモードのエネルギーは、バルクの準粒子エネルギーギャップである2Δよりも低エネルギーであり、長寿命を持つ安定なボソン素励起である。我々は、粒子ホール対称性の破れによってClappingモードが音波と結合することを明らかにした。粒子ホール非対称性を考慮した拡張準古典Keldysh理論に基づいて、音波によって励起されたClappingモードによる線形電流応答を計算した。結果として、Clappingモードの共鳴周波数で電流応答が増大することがわかった。さらに、2022年度には、非ユニタリ超伝導体における熱スピン交差応答を調べた。非ユニタリ超伝導体における対称性の破れを反映して、スピンゼーベック効果やスピンネルンスト効果が生じることがわかった。この結果は、現在、論文としてまとめている。 さらに、超伝導UTe2における超伝導ギャップ関数の対称性と内因性由来の熱ホール効果の関係を調べた。UTe2は多重超伝導相やリエントラント超伝導など、様々な非従来型超伝導の性質を示す新奇な超伝導物質であるが、いまだにその超伝導ギャップ関数は特定されていない。我々は、規約表現のもとで許されるギャップ関数に対して内因性熱ホール効果を計算し、いくつかのフェルミ面形状効果などを網羅的に調べた。研究成果をまとめた論文はJPSJ Hot Topicsに選ばれれた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、トポロジカル超伝導の交差相関応答を調べて、カイラル超伝導における異常音響電気効果の発見や、非ユニタリ超伝導における外因性由来のスピンゼーベック効果の発見など新しい知見を得た。前者は、ClappingモードというCooper対の集団励起を媒介とした音と電気の交差相関であり、当初の研究計画では想定していなかった新しい研究成果である。また、非ユニタリ超伝導でのスピンゼーベック効果やスピンネルンスト効果などの熱スピン交差応答の研究では、対称性に基づいた一般的な議論を行った。ここで得られた成果は、近年発見された非従来型超伝導UTe2などへ適応できるだけでなく、エアロジェル中の超流動3Heにも拡張できる。特に、エアロジェル中の超流動3Heでは、3次元トポロジカル超流動状態、カイラル超流動状態、非ユニタリ超流動状態が実現することが知られており、2022年度に得られた知見(異常音響電気効果やスピンゼーベック効果やスピンネルンスト効果などの熱スピン交差応答)をさらに発展させることができると期待される。以上の理由から、本研究課題は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、(1)トポロジカル超伝導における内因性由来の交差相関応答、(2)トポロジカル超伝導の表面状態がもたらす交差相関応答、(3)トポロジカル超伝導や非従来型超伝導の集団励起を媒介した交差相関応答について調べる。これまでの研究成果で、非対称な不純物散乱に由来した外因性熱スピン交差応答などがトポロジカル超伝導体で生じることがわかった。一方で、トポロジカル超伝導には非自明なベリー曲率などに由来したトポロジカル不変量が内在する。これらの非自明なトポロジーを直接反映した交差相関応答について調べる。さらに、トポロジカル超伝導の表面や界面に存在するギャップレスな準粒子状態にも注目する。この準粒子状態は、特徴的なスピンテクスチャを有するだけでなく、バルク超伝導の対称性を反映した異方的な磁気応答を示すことなどが知られている。このようなバルクトポロジーに由来したギャップレス準粒子状態が示す交差相関応答を調べる。さらに、2022年度の成果の一つとして、ClappingモードというCooper対の集団励起を媒介とした音と電気の交差相関の発見がある。これを拡張して、Cooper対の集団励起を媒介とした交差相関応答を探求していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、当初予定していた海外出張などを見合わせたため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(14 results)