2020 Fiscal Year Research-status Report
正および負ミュオンを用いたダイアモンド格子磁性体における新奇量子相の探索
Project/Area Number |
20K03864
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山内 一宏 佐賀大学, 理工学部, 准教授 (60444395)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 旭光 佐賀大学, 理工学部, 教授 (40236063)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 磁性 / ミュオンスピン回転/緩和実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
総合科学研究機構、KEK、豊田中研などとの共同研究に参加し、Na0.7CoO2の負ミュオンスピン回転/緩和実験を行った。Na0.7CoO2は、室温では常磁性金属だが、低温では反強磁性秩序を示す。これまで、正ミュオンを用いたμSR、核磁気共鳴、中性子散乱実験から、室温以上ではNaイオンの運動に伴う核磁場の揺らぎが観測されていたが、負ミュオンスピン回転緩和実験では、そのような磁場の揺らぎは観測されなかった。これは、負ミュオン位置している酸素の原子核位置では、Naイオンの影響が少ないことが考えられる。これらの結果は、今後の負ミュオンを用いたイオン運動や磁性の研究を行う上で、基礎となる結果であると考えられる。この成果は、査読付きの論文 (Physical Review B 102, 144431 (2020)) として出版された。
KEK、産総研、TRIUMF研究所との共同研究に参加し、β-MnO2の正ミュオンスピン回転/緩和実験を行った。正ミュオンは物質中で微量に存在する水素をシミュレートすることで知られている。本研究では、実験結果と第一原理計算および磁気秩序状態における内部磁場計算を比較し、β-MnO2内で微量な水素が予期せぬキャリアのドナーとして存在することを明らかにした。また、磁気秩序状態におけるMnサイトの磁気モーメントの大きさが、Mn3+から予想される値から大きく縮んでいることを明らかにした。これは、Mnと酸素の間の電荷移動が大きいことを示している。この成果は、2020年第81回応用物理学会秋季学術講演会(口頭発表、11p-Z01-10)において発表がなされた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ダイアモンド格子磁性体の合成を行い正ミュオンを用いたミュオンスピン回転/緩和(μSR)実験のビームタイムを取得することが目的であったが、すでに、CuRh2O4とCuAl2O4に関しては、J-PARC物質生命科学実験施設においてμSR実験を行った。
負ミュオンスピン回転/緩和実験の実験手法に習熟するため、総合研究機構、KEK、豊田中研との共同研究に参加し、Na0.7CoO2の負ミュオンスピン回転/緩和実験を行った。その成果は、査読付きの論文 (Physical Review B 102, 144431 (2020)) として出版された。
KEK、産総研、TRIUMF研究所との共同研究に参加し、β-MnO2の正ミュオンスピン回転/緩和実験を行った。この成果は、2020年第81回応用物理学会秋季学術講演会(口頭発表、11p-Z01-10)において発表がなされた。
|
Strategy for Future Research Activity |
CuRh2O4のCuの一部をZnで置換した試料を作製し、μSR実験を行うことで、その磁気基底状態を明らかにする。
海外のグループによりCuAl2O4のμSR実験の結果が報告されたが、3割ほどのCuとAlの結晶学的サイトが置き換わっており、試料中に存在するランダムネスの影響を取り除くことができていない。KEK、東邦大学との共同研究により、よりランダムネスの少ない試料を作製し、正ミュオンスピン回転/緩和実験を行う。
NiRh2O4の純良な試料の合成を行う。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、学会や出張実験に行くことができなかったため。
冷凍機に取り付けるクライオスタットの製作を行う予定であったが、より安く同等の性能の製品を製作する業者を見つけたので、クライオスタット製作の計画そのものを練り直したため。
|
Research Products
(5 results)
-
-
-
[Journal Article] Nuclear magnetic field in Na0.7CoO2 detected with μ-SR2020
Author(s)
Jun Sugiyama, Izumi Umegaki, Soshi Takeshita, Hiroya Sakurai, Shoichiro Nishimura, Ola Kenji Forslund, Elisabetta Nocerino, Nami Matsubara, Martin Mansson, Takehito Nakano, Ichihiro Yamauchi, Kazuhiko Ninomiya, M. Kenya Kubo, and Koichiro Shimomura
-
Journal Title
Physical Review B
Volume: 102
Pages: 144431
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-