2021 Fiscal Year Research-status Report
A novel mechanism of collective migration of cohesive cells embedded in 3D space
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20K03871
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 勝彦 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (90513622)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞の集団運動 / 力学数理モデル / 収縮力 / 接着力 / 粒子モデル / 方向依存性張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の集団運動(特にクラスターを形成しての運動)が細胞間の力のやり取りだけで実現しうるかを数理の視点から確認するために、細胞間の力のつり合いが保たれている粒子モデルを作成し、細胞がクラスターを保ちながら動きうるかを調べた。このモデルでは細胞間の力のやり取りは細胞の極性に対しての角度依存性があるとしている。 この力学的数理モデルを数値的に解くことによって、細胞は周りとの力のつり合いを保ちながら一細胞だけで移動するだけでなく、複数の細胞がクラスターを形成して一方向に動き得ることが示された。この結果は驚くに値する。なぜかというとこの粒子モデルでは粒子間は作用反作用が成り立つ状況になっており、一つの細胞が動こうとするとそれと同じ大きさで方向が逆の力がほかの粒子にかかるようになっており、粒子がクラスターを形成したまま一方向に動くという事は自明ではないからである。 この結果は多細胞生物の形づくり(形態形成)などで観測される細胞の集団移動(特にクラスターを形成しながら一方向に動く運動)を説明しうるものであり、実験との比較によってモデルの提唱するメカニズムの妥当性の検証を行う事を可能にする。 またこのモデルは粒子モデルであるために頂点モデルで代表されるような細胞の膜のダイナミックスを表したモデルと比較して、多くの細胞を扱う事ができるために、より大きなスケールでの組織形成のメカニズムの仕組みにアプローチできる可能性を持っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力者(井上康博教授(京都大学))との議論を頻繁に行ったため。またワークステーションの購入により数値計算の速度が向上したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細胞一つを一つの粒子で表現した粒子モデルだけにとどまらず、細胞のより詳細な構造を表現した膜モデルを開発し、膜にかかる張力と周りの基盤との摩擦力を考えることによって、細胞が一個体だけではなくクラスターを作りつつ動く仕組みをより細胞の詳細なレベルで解き明かすことを目指す。これにより、細胞内にある収縮力、細胞間にある接着力、細胞と基盤とにある摩擦力の3つで現在観測されている細胞の集団運動が記述しうるかどうかを調べることができる。その膜モデルをありとあらゆる現実で観測される細胞運動に適用し、どこまで説明可能であり、またどこからがより生物的な細かな機能を導入するべきかを調べる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ拡大防止のために出張の回数を減らしたので、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)