2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K03872
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
折原 宏 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30177307)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 負の粘性 / 液晶 / レオロジー / 乱流 / 非平衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
流体の粘度は流れに対する抵抗を表わすので、通常は正であるが、負の粘度を持つ流体が存在するとすると、流れは増幅されるので自発的な流れ等の奇妙な現象の出現が予想される。このような負の粘度を持つ流体の探索は古くから行われていたが、最近申請者らは電場を印加した液晶においてレオメーターを用いて負の粘性を初めて観測することに成功した。この発見は、負の粘性を持つ流体に関する新たな学問分野の開拓およびその応用へとつながると期待できる。実験および理論的考察の結果、負の粘性は電場によって誘起された乱流、分子配向変化およびトポロジカル欠陥(分子配向が不連続となる部分)と密接に関係していることが分かり、負の粘性の発現機構も提案している。本研究ではこの負の粘性の発現機構を主にシミュレーションにより検証し、必要に応じて修正を加え、確立することを目的とする。 今年度は負の粘性状態での乱流の様子を詳しく調べるために、レオメーターではなく、電極付きのガラスセルを用いて実験を行った。その結果、2枚の電極に挟まれた液晶は乱流状態にありながら、セルのガラス面に平行な平均流が生じていることが分かった。この結果を基に、自発流れを再現するモデルを構築し、シミュレーションを行った。 非圧縮性流体のナビエ-ストークス方程式に自発流れを誘起する項を導入し、時間発展を計算した。実験で用いた小さな正方形領域だけに電場が存在する条件の下で調べたところ、実験で観測された渦を再現することができた。また、ステップ電場印加後の過渡応答を実験とシミュレーションとで比較したところ、良い一致が得られた。これらの結果は本モデルの有効性を示すものである。今後はこのモデルを用いてさらに複雑な系のシミュレーションを行うとともに、この方程式をより基本的な方程式から導出する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に購入した計算機はすでセットアップが完了し、順調に稼働している。これを用いて研究業績の概要で述べたシミュレーションも行い、成果も得られている。計算機は当初想定した性能を有しているので、研究計画を問題なく実行できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に購入した計算機を用いてシミュレーションを進めると同時に、シミュレーションから予想される新規現象については実験による検証を行う予定である。令和3年度は具体的に以下の研究を行う。電場印加により乱流が発生するのは、液晶中の不純物イオンが電場により移動するためである。したがって、シミュレーションで扱う物理量としては速度場、配向場に加えてイオンの濃度場も必要になる。これらに対する方程式は最近ソフトマターの分野で使われるようになったオンサーガーの変分原理により求められている。数値計算は格子ボルツマン法を用いて行う。速度場と配向場および速度場とイオンの濃度場についてはそれぞれ格子ボルツマン法の適用例があるので、これらを参考に3つの場に対する格子ボルツマン法を適用したアルゴリズムを作成し、これまで実験で観測された諸現象と比較、検討する。
|
Causes of Carryover |
14円は端数であり、来年度使用する。
|