2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K03872
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
折原 宏 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30177307)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 負の粘性 / 液晶 / 乱流 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
負の粘度を持つ流体の探索は古くから行われていたが、我々は電場を印加した液晶においてレオメーターを用いて負の粘性を初めて観測することに成功した。この発見は、負の粘性を持つ流体に関する新たな学問分野の開拓およびその応用へとつながると期待できる。本研究では、負の粘性の発生機構をシミュレーションと実験により解明することを目的とする。 従来の実験ではレオメーターを用いていたため、上の液晶界面が移動できるようになっていた。これに対し、本研究では固定された2枚の透明電極付きの平行平板の間に挟んだ液晶に交流電場を印加した。この場合でも乱流が発生し、顕微鏡を通して乱流を形成する小さな渦が移動しているのが観測された。画像処理を用いて、乱流状態のパターンの変化から平均の速度を求めたところ、自発的な流れがセル全体で生じており、ある場合には大きな渦も存在することが分かった。また、自発流れを引き起こす項を加えた2次元ナビエストークス方程式によりこのような自発流れを再現することができた。 当初の目的にあった3次元のシミュレーションも行った。液晶の配向場、流れの速度場および電場を変数とする方程式をオンサーガーの変分原理より導出し、有限要素法による数値計算を行った。まず、散逸構造として良く知られている液晶電気対流に適用し、ロールが生成されることを確認した。印加電圧を高くすると、流れが速くなり、欠陥が生成されることが再現できた。さらに電圧を上げ、定常せん断流下の乱流状態でのせん断応力をシミュレーションの結果から求めたところ、応力が負、すなわち粘度が負になっていることが確認できた。また、この負の応力は速度勾配が界面近傍で逆転することに起因していることが明らかになった。 連続体理論により液晶の乱流状態における負の粘性を再現でき、その機構の本質を明らかにした。今後この手法の流れが関係する他の現象への適用が期待される。
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