2021 Fiscal Year Research-status Report
Effective active stress in collective behaviours of active matters
Project/Area Number |
20K03874
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
義永 那津人 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (90548835)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクティブマター / 非平衡物理 / 生物物理 / 自己駆動粒子 / 非線形ダイナミックス / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクティブマターは、非平衡状態で多数の自己駆動粒子が示す集団運動の解明を目指す分野である。細胞や細菌の集団挙動の理解や、最近では、Janus粒子やパッチ粒子を用いて人工的に作製されたコロイド粒子の動的な自己組織化パターン形成の理解や応用などの研究が行われている。前年度は、細菌の集団運動の実験結果を説明するために、集団運動の拡散係数や応答係数の解析を行った。 本年度も引き続き、VicsekモデルとActive Brownian粒子、そして流体相互作用を模した長距離の回転相互作用を入れたモデルで、集団運動における拡散係数と応答係数の解析を行った。拡散係数については、実験で観測されているが密度に対してピークを持つことが、長距離の回転相互作用を入れたモデルによって再現できることを示し、また、排除体積相互作用がない場合にこの効果が顕著に現れることを明らかにした。これは、三次元的に細菌がすれ違うことができるかどうかで依存性が異なることを示唆している。また、外力を加えた時に応答に関しては、配向相互作用を考慮すると高密度になるに従ってより大きな応答を示すことを明らかにした。これは、平均場近似的には配向相互作用が密度依存性を持つことに起因すると考えられ、解析的な計算と定性的に良い一致を示している。細菌を用いた実験結果でも、密度に対して応答係数が単調に増加することが観測されている。これらの結果は理論と実験との比較を含めて論文としてまとめて投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクティブマターの研究は集団運動が示す動的な構造についての研究が多く、外部の摂動に対する応答についての理解はあまり進んでいなかった。本研究では、細菌の集団運動の実験結果を説明するためのモデルを構築するという点では順調に進展し、定性的には実験結果再現できている。定量的な解析は現在進行中で、単純なモデルを使用しながら、応答の密度依存性の物理的なメカニズムが明らかになりつつある。 本年度は、前年度同様コロナウイルス蔓延のため対面での研究会への参加や遠隔地の研究者との議論ができなかった。年度の後半では海外の研究会では対面やハイブリッド形式で行うようになったが、移動や手続きの困難を考慮してオンラインで参加するようにした。オンラインでの研究会やセミナー、議論には慣れてきたこともあって、前年度と比べると情報収集や研究の成果発表の面では多くの機会もあり予想以上に進んだのではないかと考えている。一方、これまで交流がなかった研究者との議論や新しい問題を発掘するような議論はオンラインでは難しく、その点では不満の残る年度であった。ただ、最近始めた機械学習の研究を取り入れることによって、従来のアクティブマターの研究の延長ではできなかった研究を視野に入れることができ、今後の成果につながるためのよい準備ができたのではないかと考えている。実際に、非線形偏微分方程式で記述される連続場の方程式とその中のパラメーターを推定する枠組みを構築したり、分子動力学シミュレーションのような粒子モデルでの粒子間相互作用をデータから推定したりする手法の研究も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロな方程式に現れるアクティブストレスや拡散係数などの係数、そして構成方程式を、粒子スケールの情報から作る手法について研究を行うために、機械学習の手法を取り入れることを検討している。これまでに、また、粒子モデルのデータから連続場の方程式を導出する手法について、最近行われている研究の情報収集を行い、それらの具体的な手法の理解などを進めている。また、ターゲットとなる構造が与えられた時に、その構造を再現するための連続場の数理モデルを推定する手法や粒子モデルにおける粒子間相互作用を推定する枠組みの構築に成功しており、これらをさらに発展させることでアクティブマターのマクロな方程式を推定し、推定した方程式から構成方程式の物理的な起源を探ることが可能になるのではないかと考えている。 また、生体分子や細胞、あるいはコロイド粒子などの集団運動のモデルの研究をこれまで行ってきた知見を活かして実験研究者との共同研究を進めていきたい。現在は、タンパク質の集団がATPを消費しながら動的に細胞膜に吸着・脱着するシステムのモデルを構築し、連続場のモデルの解析を行ってきている。モデルの解析結果は実験結果と良い一致を示しており、特に、非線形波の形成メカニズムの解明につながるのではないかと考えている。このようなモデルは他の生物システムへ応用できる可能性もあるので、今まで行ってきた研究を整理しながらどのような問題に適用可能であるのかについて検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの蔓延により、国内外の研究会はすべてオンラインになり、遠隔地の研究者との議論もオンラインになった。海外の研究会への参加が容易になり、発表や情報収集を行うことができたのはオンラインの良い点であるが、問題が明確でない研究や新しい問題についての議論はオンラインでは難しいことも分かってきた。徐々に状況が改善することが期待される現状を踏まえて、オンラインの長所は残しつつ、効率的な研究のために対面での議論も進められるようにしたい。また、計算機の調達に関しても、依然外部業者が大学に訪問することが困難になったことや、部品等の調達に時間がかかることなどにより、我々がアクセス可能なクラウド計算機などを利用することにした。使用計画に関しては、次年度も不透明な部分が多く、特に旅費に関しては同様な状況が続くと考えられる。状況を注視しながら計画的に使用する。
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Research Products
(10 results)